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第15巻第2号(2017年12月発行)抄録集

【特集 メ ンタルヘルスとレジリエンスの先端研究:最新の動向】

トラウマティック・ストレスとレジリエンス

西  大輔・臼田謙太郎
本稿は,トラウマティック・ストレスとレジリエンスの理解を深めることを目的として,先行研究を概観した.まず子ども期の逆境体験を例にとり,トラウマティック・ストレスが心身に与える広範な影響について述べた.次にレジリエンスが多義的な概念であり,多様な意味で用いられているために,概念の理解が難しくなっている側面があると思われることを指摘し,多様な用いられ方や,首尾一貫感覚など近接概念との共通点と相違点について知ることが適切な理解の一助になるかもしれないことを述べた.そのうえで,レジリエンスを向上させうる治療法や取り組みについて紹介し,今後のレジリエンス研究の課題についても若干の考察を加えた.
 

アフガニスタン・イラク戦争兵士の精神医学的疫学研究

重村 淳・長峯 正典・谷知 正章・斉藤 拓・小室 葉月・内野小百合・戸田 裕之・高橋 聡美・清水 邦夫・吉野 相英
2001年のアフガニスタン戦争,2003年のイラク戦争開戦後,米国・英国において膨大な数の精神医学的疫学研究が行われた.兵士を対象とした研究は,大規模で縦断的調査が実施しやすい利点がある.戦争が続くなかでデータが公表され,派遣前・中・後の兵士のメンタルヘルス対策がエビデンスをもとに議論される事態となった.トラウマティック・ストレス研究が飛躍的に進んだ一方で,スティグマやレジリエンスなど,さらなる検証が求められる領域が残っている.
 

救援者のメンタルヘルス:日本の消防職員に焦点を当てて

畑中 美穂
本論文では,日本の消防職員に焦点を当て,PTSDやうつのハイリスク率,およびその関連要因を実証的に検討している研究を概観した.これまでに報告されてきたPTSDハイリスク率は0~22%であり,活動中の曝露強度,急性ストレス反応,救援活動以外のストレッサー,ソーシャル・サポートの乏しさ,組織に対する不信や不満と関連することが複数の研究において示されていた.日本の消防職員のPTSDハイリスク率は,海外の消防士や救急隊員の検討結果と類似した値であり,関連要因についても共通点が確認された.救援者のメンタルヘルスに関する海外の研究は,リスク率や関連要因の実態把握だけでなく,治療の有効性や予防のための脆弱性要因や適性の検討へと展開してきているが,日本では,治療や予防の観点に立つ実証研究が乏しく,今後の課題として指摘された.
 

米陸軍におけるレジリエンス施策―Comprehensive Soldier and Family Fitness(CSF2)について―

長尾 恭子・長峯 正典・重村  淳
イラク・アフガニスタンにおける作戦以降,兵士のメンタルヘルスに深刻な問題を抱える米陸軍は,兵士のレジリエンスを高める施策としてComprehensive Soldier Fitness(CSF)を2009年より開始し,2014年以降はComprehensive Soldier and Family Fitness(CSF2)として,兵士の家族や事務官も対象に加えられた.CSF2は4方向からのアプローチ(オンラインツールによる評価と学習,軍の公式教育,各部隊でのトレーニング,トレーニングセンターにおけるパフォーマンス強化トレーニング)により,関係者全員がレジリエンス・パフォーマンススキルを高められるよう構成されている.一方,CSF2の有効性に関するエビデンスは現時点では十分とは言えない状況であるが,レジリエンスを高めるこのような取り組みは,今後も活発に行われるものと考えられ,さらなる知見の蓄積が望まれる.
 

バックナンバーの入手について

学会事務所に残部がある第6巻2号までについては、希望される学会誌の巻号と郵送先を明記のうえ、1冊につき882円分の切手をそえて学会事務局までお申し込みください。
また、7巻1号以降につきましては、下記までお問い合わせください。

(株)金剛出版 出版部 「トラウマティック・ストレス」担当
〒112-0005 東京都文京区水道1-5-16
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