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| 国際トラウマティック・ストレス学会第19回大会 |
The
International Society for Traumatic Stress Studies(ISTSS)
19th Annual Meeting,Oct. 29- Nov. 1,2003,
The Palmer House Hilton Chicago, IL USA |
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国際トラウマティック・ストレス学会第19回大会が、米国イリノイ州シカゴで10月29日から11月1日の4日間にわたって開催された。開催地であるシカゴは、米国でも歴史の古い大都市であり、世界で2番目の高層建築であるシアーズタワーをはじめ有名な建築が立ち並ぶ中で、夜ともなれば、ブルースの流れる趣のある街でもある。会場であるPalmer
House Hiltonは、シカゴの"Loop(商業地域)"の中心にあり、シカゴ美術館やシカゴ交響楽団のホールに隣接して、湖の眺望も楽しめるというまたとないロケーションにあった。参加者たちも学会の合間にしばし美術館や市内の名所で息抜きを楽しんだようである。
今年度は、Onno van der Hart氏が会長となり、「Fragmentation and Integration in
the Wake of Psychological Trauma」というテーマで、企画がなされた。このテーマは、"トラウマによる断片化(fragmentation)"という問題に精神生物学の視点を当て、複雑なトラウマ反応に対して発達してきた様々なアプローチを統合することを意味しており、特に、文化差や難民、テロ、拷問、HIVなど多様なトラウマイベント、複雑性トラウマのからの回復などに力点が置かれた大会となった。
また、大会の前日から当日午前までPre-Meeting Institutesとして、早期介入、長期暴露療法、複雑性PTSDの治療など25のプログラムが組まれており、治療介入の研修などを受けることができた。
大会は、「Surviving Violence and Shattering Silence」というL. Prescott氏より世界中に蔓延している子供への性暴力や身体暴力の影響と沈黙する被害者へいかに手を差し伸べていくかという治療者の使命に訴えかえる力強いOpening
Plenaryで始まった。聴衆を多くひきつけたシンポジウムをいくつかあげてみると、ひとつは、近年進歩の著しい脳画像からトラウマの本質にせまろうとする「New
Research from Brain Imaging Studies in PTSD」で、この分野の第一人者であるBremner氏のチームから、双生児研究においてトラウマ曝露が海馬容積に減少をきたしている可能性や、長期経過でPTSDの回復に伴い海馬容積の回復が見られるなどの興味深い知見が報告された。また、「Treatment
Outcome Studies of PTSD」では、van der Kolk氏らからEMDR、認知行動療法、SSRIのPTSDに対する治療効果の比較についての発表がなされた。長期予後においてやや勝るとvan
der Kolk氏はEMDRに軍配をあげていたが、実際のところ、EMDR、認知行動療法、SSRIは、コントロールや支持的精神療法に比較してPTSDの症状の改善についての有効性は明らかであり、PTSDの治療法として確定した感がある。この大会の治療についてのシンポジウム全般で、認知行動療法及びその類縁治療が討議されており、もはや複雑性PTSD、traumatic
griefなど多様な反応について、認知行動療法をどのような形で行い、どのような曝露内容で行うかという細部の議論へ進んでいるという印象であった。
日本からもJSTSSの理事を含め10名以上の研究者の参加があった。日本人の発表としては、JSTSS会長の飛鳥井望氏(東京都精神医学総合研究所)からサリン被害者の脳画像特性について、柳田多美氏(上智大学)からDV被害者の治療介入の効果についてポスターによる発表があった。また、石井朝子氏(東京都精神医学総合研究所)からDV被害女性のリスクファクターとして怒りの表出と親の行動特性についてのシンポジウムでの研究発表があり、参加者から文化差に視点を当てた活発な論議がなされていた。
次回20回大会は、米国ルイジアナ州ニューオリンズで2004年11月14日から17日にわたって開催される予定である。
国立精神・神経センター精神保健研究所
中島聡美
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