JSTSS Japanese Society for Traumatic Stress Studies -日本トラウマティック・ストレス学会-
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第4回大会(2005/3開催)■
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◆ シンポジウム要旨 ◆

◆シンポジウム A-1
「トラウマへの心理療法」
座長:富永良喜(兵庫教育大学)、小西聖子(武蔵野大学)

 本シンポジウムの目的は、犯罪被害者への心理療法としての認知行動療法と動作療法の有効性と課題を検討することである。井口藤子氏は、性犯罪被害者に対して長時間曝露療法(PE)を適用し、その効果と課題を報告する。PEの有効性は実証されているが、わが国における報告は少ない。PEの適用に関する留意点や治療者が予め受けておく訓練についても明らかにされるであろう。藤代富広氏は、犯罪被害者に対して動作療法を中心とした心理療法を適用し、トラウマからの回復を支援している。動作療法では、脅威として認知されている現在の外界への対処と、過去のトラウマ記憶への向かい方としての「適切な身構え」の形成が要点となる。小西聖子氏は、トラウマへの心理療法の最新の動向を報告される。本シンポジウムではフロアからの活発な討議を期待する。


◆シンポジウム A-2
「災害と救援」
座長:加藤 寛(兵庫県こころのケアセンター)、岩井圭司(兵庫教育大学)

 阪神・淡路大震災以後の自然災害では、直後から被災者に対する精神保健活動が行われるようになってきた。その多くは、地域内の保健所や精神保健センターを中心として、通常のサービスの延長で行われたものである。一方、大規模災害では他地域からの救援を得ながら、息の長い活動をいかにコーディネートするかが、大きな課題となる。本シンポジウムでは、昨年10月に発生した新潟県中越地震での活動の実際について知ることができる。
 福島らの発表では、精神保健センターを中心とした直後からの活動プロセスが報告される。中島らは、外部からの支援として国および関連機関が果たした役割、および学会の活動状況について、報告する予定である。さらに、岩尾らは阪神大震災の経験を踏まえて、兵庫県からの派遣チームが行った活動、そして二つの震災の比較から見える問題点などを述べる。これらの実践報告をとおして、大災害後の精神保健の方向性と、その質を高めるために必要なことについて議論したい。


◆パネルディスカッション A-3
「PTSD治療のこれからを考える−「PTSD治療に関する検討委員会」報告
座長:飛鳥井望(東京都精神医学総合研究所)、富永良喜(兵庫教育大学)

 PTSD概念の急速な社会的浸透に比べ、治療やケアに関する研究や議論は大きく立ち遅れており、海外先行研究の知見等を参考にしながら、臨床家が個々に模索をしているのが日本の現状である。JSTSSでは、今年度「PTSD治療に関する検討委員会」を設置した。その目的は、PTSDの治療とケアに関して、今後の学会活動に反映させるための資料を提供することである。活動の一環として、2004年9−10月に医療・心理・保健福祉専門職の正会員を対象としたアンケート「PTSDの治療とケアに関する調査」をインターネット上で実施したので、その結果を報告する。また各委員よりPTSDの各種治療法に関する最近(2000年以降)のエビデンスに基づいた知見を中心に紹介し、議論したい。


◆シンポジウム A-4
「援助者のストレス」
座長:広常秀人(大阪大学医学部)、大澤智子(兵庫県こころのケアセンター)

 外傷に関わることにはリスクが伴い、援助者も例外ではない。その影響は二次的外傷性ストレス、代理受傷と呼ばれ、わが国においても、援助職を対象に調査が行われるようになった。しかし、職業役割の違いからそれぞれの援助者が被るストレスや影響には質的な差異が存在するように思われる。共感が治療関係の核となる臨床家、外傷体験を目の当たりにするが、内面への影響が少ない消防や警察が両極に、そして、その間に看護師が位置するという「援助ストレスのスペクトル」が描けるのではなかろうか。
 そこで、本シンポジウムでは大澤が概観および問題提起を行い、加藤には震災や殉職事故を体験した消防・救急隊員、上田が警察官の体験を、そして広常からは救命救急センターの看護師を対象にした調査を発表してもらい、今後、日本で行われる二次受傷の研究に方向性を示唆できるような場をフロアと共に持ちたい。


◆シンポジウム B-1
「司法とPTSD」
座長:杉浦ひとみ、岡田幸之(国立精神・神経センター)

 近時、人的被害について法的な解決を求める中で「トラウマからの回復」を図るということが多くなってきている。それは、ひとつには一定のトラウマ(現時点ではPTSD罹患が要件であるように扱われている)が法的救済の対象となる「被害」であると認知されてきたこと、もう一つには被害者が自ら回復を図ろうと主体的活動を行うようになった、あるいはそれを支える社会的意識ができたことによると思われる。しかしながら、ある加害行為によって生ずるPTSDという被害は刃物による創傷のように分かり易い被害ではない。そこで、まず法的処理の中でPTSDがどのような位置づけを与えられるのか、どのようにPTSDが診断されたときに証拠として有益であるか。逆にどのような症状を呈したときに(PTSDでないとしても)法的な救済を与えるべきか。さらには被害者を取り巻く専門家として医師と法律家はどのような連携を取ることができるか、がねらいである。


◆シンポジウム B-2
「一般医療とトラウマ」
座長:松岡 豊(国立精神・神経センター)、川名典子(聖路加国際病院)

 近年、心筋梗塞、脳卒中、集中治療、エイズやがん医療などの身体疾患患者の中にも、PTSDと診断されないまでも外傷後ストレス症状を持つ人がいることが報告されてきています。一方、我々自身に内在する身体疾患をトラウマの枠組みで考えることに対する異論も唱えられています。このシンポジウムでは、がん医療の現場における心的外傷について、国立がんセンター研究所支所の内富庸介先生に、小児がん経験者の両親が長期にわたり抱える外傷後ストレス症状と関連要因について、広島大学大学院の大園秀一先生に、救命救急センターにおける心的外傷について、国立精神・神経センター精神保健研究所の川瀬英理先生にそれぞれ発表をお願いしました。三つのご発表の後、フロアの皆さんとご一緒にこのテーマについて議論したいと考えています。多数のご参加をお待ちしています。


◆シンポジウム B-3
「DVと性被害」
座長:加茂登志子(東京女子医科大学)、宮地尚子(一橋大学)

 ドメスティック・バイオレンス、性犯罪被害、セクシュアル・ハラスメントなど、ジェンダーとセクシュアリティをめぐる暴力とその被害から生じる精神健康障害について理論的、臨床的に様々な角度から検討する。わが国の精神医学においてトラウマ学はいまだ新参の分野であることは否めず、そのなかでもジェンダーとセクシュアリティという切り口はさらに少数派によってのみ論じられているに過ぎない。しかし、いわば二重に「とり残された」この分野の輪郭が明確となることによって、最後のピースが得られるパズルはおそらく少なくないであろう。臨床の現場でのこの領域へのニーズが高まりつつある現状、そして、それにもかかわらずある一定水準に達した治療の供給が余りにも限られている現状を踏まえて、まだ充分に開かれていない扉を開けてみたい。


◆シンポジウム B-4
「学校におけるトラウマ支援」
座長:元村直靖(大阪教育大学)、藤森和美(聖マリアンナ医学研究所)

 学校が、災害、事故および犯罪などに巻き込まれることがあります。たとえば、阪神淡路大震災や新潟中越地震、、外部からの侵入者による児童殺傷事件、登下校中の誘拐事件などです。海外でも、ニューヨークのテロ事件、ロシアベスランでの人質事件や、ごく最近では、スマトラ沖の地震による津波被害がありました。このような犯罪や災害は、学校を危機に陥れます。危機は、不意に襲いかかってくるのです。危機は突発的に起こりやすく、危機が起こってから、それにどのように対処したらよいのか分からないといった問題が生じてきます。学校危機への対応で、最も優先すべきことは、言うまでもなく「人命を守る」ことですが、同時に「被害者の心身の苦痛を癒し、回復をはかる」ことが重視されなくてはなりません。今回のシンポジウムでは、このような学校危機の際にどのような危機対応や子どもたちのケアが必要であり、学校においてどのような支援が可能かについて、議論を深めたいと思います。


◆シンポジウム C-1
「惨事ストレス」
座長:緒方克彦(自衛隊岐阜病院)、松井 豊(筑波大学)

 このセッションでは、行政組織の一員として救援活動を行う人々が被るストレス(CIS)に関する問題を取り扱う。現在我が国では警察、消防、海上保安庁、自衛隊等が、国内外の災害・事件の対処活動を行っている。だが状況が想定外の場合や急激に被害が拡大する際には、諸機関との調整困難や資源の供給不足等の理由から、被災者の窮状を思うように救済できずに、救援者自身が強いストレスを受け、精神疾患に陥ってしまう者も少なくない。
 そうした理由から平成13年度〜15年度まで、厚生労働科学研究の分担として「災害救援者が被るストレス」が開始され、その後漸くCIS研究のすそ野が拡がりつつある。今回は消防、海上保安庁、自衛隊の研究者から、それぞれの災害救援時のストレスケアへの取り組みについて発表して頂く事となり、関係者にとって今後のCIS対処について参考となるところが大きいと思われる。


◆シンポジウム C-2
「虐待を受けた子供の治療」
座長:藤林武史(福岡市保健福祉局こども総合相談センター)、奥山真紀子(国立成育医療センター )

子どもにとって最も深刻なトラウマは信頼すべき大人からの「子ども虐待」であり、その後の精神障害や様々な問題行動発現の危険も大きいことが知られている。従って、「子ども虐待」は早期に食い止めると同時に、子どもの心身の障害やダメージからの回復を促すような治療が必要となる。そこで今回は、「虐待を受けた子どもの治療」に焦点を絞って、現在、どのような治療が試みられ、どのような成果が上がっているのかを検討することとした。本シンポジウムでは、愛着障害への治療、遊戯療法を中心としたトラウマへの治療、感覚統合障害をターゲットにした治療、薬物療法を含む過覚醒への包括的治療、に関して、それぞれのシンポジストに発表していただき、それぞれの治療の適応、有効性、今後の可能性、などに関して議論を深めていきたい。


◆シンポジウム C-3
「遺族支援」
座長:大山みち子、白井明美(武蔵野大学)

 大切な人との死別をどう受け止めるかは、人にとって、普遍的である一方で容易には越えがたい課題でもあるだろう。遺された人々の課題について、心理学・医学の徒がどのようにとらえ、どのように援助しているのか、その最前線を紹介し検討しあう試みが、今回のシンポジウムである。とはいっても、ことは簡単ではない。遺族の悲嘆とそれにまつわるさまざまな事柄は、いわゆる学術用語や社会的なくくりでは必ずしも捉えきれないことを、我々は感じているのではないだろうか。しかし、そこで考えることをやめたくはない。 今回は、こうした課題について、机上の学問や性急な結論づけに終わらせず、またわが国の実情に即した地道な活動を行っている3名のシンポジストに、それぞれ自らの臨床あるいは研究の一端を述べていただき、討論の手がかりとしたい。


◆シンポジウム C-4
「治療と回復」
座長:金 吉晴(国立精神・神経センター)、白川美也子(国立病院機構天竜病院)

 どのような医療、福祉の分野でも言えることだが、援助や治療の方法が学問的、制度的に整備されるにつれて、生き生きとした臨床の取り組みが見失われることがある。本学会でも多くの重要なテーマが話し合われているが、そうした複合的な要素が個々の症例の治療にどのように行かされるのかと言うことを検討したいと考えている。様々な事例への中長期的な取り組みの報告を通じて、日常的に遭遇する困難や治療の方法論などを考察したい。またトラウマ論はとかく被害論に傾きがちであるが、トラウマを体験することの意味は文化的、歴史的にもより広く捉えられるべきである。近年では外傷後成長posttraumatic growthという考え方もあるが、こうした視点も合わせて話し合う場にしたい。

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