PTSD トピックス

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シンポジウム・イベント情報

学会奨励賞

日本トラウマティック・ストレス学会では、優れた研究を表彰し、学会活動をより活性化するために、
第5回大会から学会奨励賞を設けています。

 

第17回大会奨励賞(2018年6月)

このたびの17回大会では、最優秀演題賞1件、優秀演題賞2件の受賞がありました。
受賞された先生に、研究紹介も含めたコメントをいただいております。

最優秀演題賞

清水邦夫先生( 防衛医科大学校 防衛医学研究センター 行動科学研究部門)
演題:EPA(エイコサペンタエン酸)を豊富に含む魚食を推奨する食事指導はPTSDの予防に有用か?
:PTSDモデルラットを用いた検討

最優秀演題賞という栄えある賞を頂き、誠にありがとうございます。大変驚いておりますと同時に、身の引き締まる思いです。今回の受賞を機に、一層の努力・精進を重ねて行きたいと思っております。

今回の発表は、EPAが豊富に含まれる魚を積極的に多く摂る食事習慣が、PTSDの予防に有用か否かについて、シャトル箱を用いたPTSDモデルラットを使用して検討したものです。近年、青魚に豊富に含まれるω3 系多価不飽和脂肪酸のメンタルへルス維持・増進効果が注目されていますが、中でもEPA(エイコサペンタエン酸)は抗PTSD効果に優れるとされており、安全性、易実施性、易受容性の観点からも、EPAを豊富に含む魚食を積極的に勧める食事指導は、PTSD予防やレジリエンス向上の選択肢として有力な候補とされています。

そこで、シャトル箱法によるPTSDモデルラットにEPA含有3種濃度の餌を、トラウマに相当する逃避不能フットショック負荷前3週間と負荷後2週間の計5週間連続で自由に摂取させた上で、当該ラットのPTSD様行動を測定したところ、EPA含有濃度1.5%と3%の餌を摂取させた群で、有意に回避・麻痺症状様の低活動性行動変化が回復しました。このことから、EPAが豊富な魚等を積極的に多く摂ることを推奨する食事指導は、PTSDの回避症状や麻痺症状の予防に有用であることが示唆されました。以上が、今回の研究報告の概要であります。

本研究を実施するにあたり、多くの同僚や研究協力者の皆様方から様々なご支援を頂きました。この場をお借りし、心より感謝申し上げます。今後も、より深みのある生物学的研究へと発展させて行く所存でありますので、皆様方の御指導・御鞭撻を何卒宜しくお願い申しあげます。この度は本当にありがとうございました。

優秀演題賞

文珠紀久野先生(公立大学法人 山梨県立大学)
演題:戦乱によるTraumaの軽減,解消を目指す支援者養成
-東ティモールにおける自国民相互による援助体制構築を目指して-

この度学会奨励賞という栄誉な賞をいただき誠にありがとうございます。東ティモールで支援活動に携わっておられるスタッフの方々、そして通訳の労をとって下さった大坂智美様、本研究を遂行するためのコーディネート等をして下さった方々の多大なご協力によって実施できたことに感謝申し上げます。

本研究は、長い戦乱状態を経て、平和で安定した国となった東ティモール民主共和国を対象に行ったものです。戦争・戦乱は国土の破壊だけでなく、人々の生活、経済面、健康面はもちろんのこと、心理面にも多大な悪影響を及ぼします。特に命の危険、人格の破壊を伴うような過酷な体験を受けざるを得ず、そこから受けるTraumaに多くの人々が苦しむことに陥ります。その上、戦乱によって援助の専門家もTraumaを抱え、さらには、専門家としての教育の機会を奪われるため、Traumaに苦しむ人々は援助を受けられない状況になってしまいます。

長期に渡る援助が必要となることを踏まえ、自国民が自国民のためにTrauma軽減(解消)を担う支援者となれる人材養成が急務と考えました。そこで、本研究の第一の目的は、参加型ワークショップを通して、『援助の基本』を学び、習得できる方策を検討すること、第二に支援者相互のネットワークを形成し、相互に連携を図りながら有効な支援ができる体制を構築することを目的として実施しました。その結果、『援助活動』に携わっているスタッフ自身もTraumaを抱え苦しんでいること、『援助』は日常の活動そのものと捉えつつも、これまでのワークショップで学習したカウンセリングの基本の重要性を認識し、実践していることが浮かび上がってきました。参加者相互の分かち合いは、援助者としての自分自身の気持ちの安定に役立つこと、参加型ワークショップは参加者自身の学習を深め、さらには、共に学びあう関係が構築できる機会ともなり、支援者相互の連携ネットワークの構築に貢献できることが見いだされました。

現在東ティモールは、平和になり生活も安定してきましたが、非常に長期間Traumaに晒されつづけた影響は、夫から妻への暴力、親族間での性的暴行の多発という深刻な問題を生み出してきています。戦乱によるTraumaはもちろんのこと、その問題からのTraumaへの対処もできる援助の専門家を養成することは、なにより重要であると考えています。 今回の受賞を励みに、これからも戦争・戦乱によって受けたTraumaへの対応策を検討し、援助者の養成に携わっていこうと思っています。

本当にありがとうございました。

優秀演題賞

小林佑衣先生(防衛医科大学校精神科学講座)
演題:福島第一・第二原子力発電所員における心的外傷後ストレス障害(PTSD)症状と対人的サポート感との関連

このたびは優秀演題賞をいただきまして、大変光栄に思っております。
トラウマ体験後にPTSD症状の緩和には対人的サポートが重要なことは知られていますが、原子力災害の復旧作業従事者については先行研究がありません。本研究は、東日本大震災時において福島原発で働いていた職員のPTSD症状と対人的サポートの関連について解析を行いました。事故の2,3ヶ月後および2年8ヶ月後にアンケート調査を行い、861名に有効回答をいただきました。PTSD症状についてはIES-Rを、対人的サポートについては上司、部下・同僚、家族、友人、住民からの支えの有無について、それぞれ5段階Likert尺度にて評価しました。結果、職場(上司、部下・同僚)の支えが感じられた場合に、2回目の調査でのPTSD症状に改善が見られました。このことから、職域での惨事ストレス対策では、職域での対人関係の良好さがPTSD症状の緩和に寄与することが示唆されました。職域での対人関係への介入がPTSD症状を緩和させうるかについて、さらなる研究が求められると考えております。
災害が多発する本邦において、支援者におけるPTSD症状を緩和するためにとりうる手段をできるだけ多く用意しておくことはきわめて重要だと考えます。本研究がその一助になるよう今後も研究を進めてまいりますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

 

以上、3件です。
受賞された先生方、おめでとうございます。