PTSD トピックス

  • 学会員 メンバーシップ応募
  • お問い合わせ

ARCHIVE

シンポジウム・イベント情報

大会情報

 

第13回大会 大会長挨拶

この度、第13回日本トラウマティック・ストレス学会が、3年前に大災害に見舞われ、今もなおストレス下にあるここ福島で開催されることにつきまして、大きな意義を感じますと同時に、大変重い責任を感じております。

2011年3月11日の東日本大震災は、地震、津波、放射能汚染という三種の災厄を福島にもたらしました。
中でも、放射能汚染の問題は、実際の物理的な汚染のレベルを超えて今現在も、福島全県民を不安と混沌の中に巻き込んでおります。
家や田畑が無傷であるにも関わらず使用を制限され避難を余儀なくされ、生活の基盤と安心な日常を奪われた避難区域の約21万人の住民が居られます。
科学的見解が今も分かれる中で、究極の選択を迫られた成長期の子供を持つ親御さんたち、県外への自主避難を選択した約2万7千人の自主的避難者達が居られます。
また、避難当初のタクシー乗車や宿泊の拒否、避難先で「放射能がうつる」と言われて不登校となった子供達、このような放射能スティグマの問題は解消されたのではなく深く沈潜しているように思われます。
また、従来住民とは伝統や生活習慣の異なる避難住民の皆さまの苦悩も続いています。
その他、心的外傷後ストレス障害やアルコール依存の増加、仮設住宅や借り上げ住宅に住む高齢者の認知機能の低下、長期化する避難生活における児童のこころの問題、放射能汚染に対する不安・恐怖に関わる問題など、福島県民のメンタルヘルスの問題は、枚挙にいとまがありません。

いま福島県におけるメンタルヘルスケアは、荒廃から未来に向けて立ち上がるための道標を求めております。
それは再生を目指すものではなく新たに生まれ変わる道です。例えば、相双地域においては、震災直後に世界に前例のない精神医療の空白地帯が生じました。
その結果、新しいメンタルヘルス・アウトリーチの導入しか、地域精神医療の崩壊に対処する答えが無くなりました。
恐らく震災以前には最も導入が困難だった地域に、新しい精神医療が根を下ろしつつあるのです。これは、本学会でシンポジウムとして取り上げさせていただきました。

震災や放射能事故に限らず、トラウマに対する医療の根本は、トラウマ前の状態への回帰ではなく新たな心の在り方を模索する道程であるのではないかと考えます。
この学会が、現在の福島や多くの被災地で最も希求されているメンタルヘルスケアの新生への道標を示すものとなることを強く祈念いたしますと同時に、多くのストレス関連の精神疾患のこれからの治療を提供するものであることを期待します。

第13回日本トラウマティック・ストレス学会
大会長 矢部 博興
公立大学法人福島県立医科大学
医学部神経精神医学講座 教授

第13回大会ホームページはこちら