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第12巻第2号(2014年12月発行)抄録集

 【特集 阪神・淡路大震災20 年】

阪神・淡路大震災により死別を経験した遺族の状況─15年目の調査結果より─

内海千種*1,2・宮井宏之*3・加藤 寛*2
*1 徳島大学大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部  *1兵庫県こころのケアセンター *3沖縄県八重山病院

阪神・淡路大震災による死別が,遺族に及ぼす長期的影響について検討するため,質問紙調査を行った.震災から15年目にあたる2009年11月から郵送により調査協力を行ったところ,93名から有効回答がえられた.PTSD症状,悲嘆反応,抑うつ症状,QOLの状態から,総合的に遺族の状況を検討した結果,心理的影響が強くQOLが低下している群と重篤度が低くQOLの低下が認められない群とに二分された.心理的影響が強い群の方が,被災時や死別時に無力感や茫然自失感を感じ,調査時点でも震災の影響があるという回答の割合が高かった.本調査の結果より,被災時や死別時の心理的状態が長期的な精神健康に関連している可能性が示唆された.また,長期的かつ複合的に心理的影響の残る場合があることを踏まえた支援体制作りが必要である.


PTSD症状の増悪と再燃:東日本大震災が阪神・淡路大震災被災者に及ぼした影響

加藤 寛
兵庫県こころのケアセンター

大災害後の疫学研究やスクリーニング調査では,心的外傷後ストレス障害(PTSD)の可能性がある被災者の割合は,かなり高いことが示される一方で,実際の地域保健活動や,診療の場面では,PTSD症状を訴える被災者に遭遇する機会はあまり多くないことが,知られている.この乖離が意味するのは,災害後にPTSD症状を持ったとしても,多くの被災者は相談や診療を受けることなく,自然寛解するか慢性化するか,いずれかの経過に身を委ねるということである.本稿では,筆者が診療場面で遭遇した阪神・淡路大震災被災者で,長い期間,相談や治療を受けてこなかった者が,東日本大震災の直接的経験や報道がきっかけとなって,症状が顕在化,あるいは増悪した症例を提示し,長期的経過と受療行動について検討した.示唆された.また,長期的かつ複合的に心理的影響の残る場合があることを踏まえた支援体制作りが必要である.


阪神・淡路大震災後の教育現場での心のケアの取り組み─教員の視点から─

市橋真奈美
関西福祉大学 発達教育学部

阪神・淡路大震災後の教育現場での心のケアに関する兵庫県における取り組みの概要について,特に教育行政・教員の視点から報告した.また,兵庫県教育委員会の研究・研修機関である「心の教育総合センター」での経験等から,「教育」本来の機能を生かした心のケアの取り組みについて紹介するとともに,これまでの取り組みの成果を踏まえた教員との連携の視点として,心のケアの必要性の基準の提示および長期にわたる心のケアの必要性の啓発,教員と児童生徒とのつながりや関係性の重視の3点を指摘した.


【原著】

インベストメント・モデルの基礎的検証―親密なパートナーからの暴力関係を終結するか継続するかの意志決定の側面から―

土岐祥子*1・藤森和美*2
*1 武蔵野大学大学院人間社会研究科  *2武蔵野大学

親密なパートナーからの暴力(IPV)関係を終結するか継続するかの決定に関する説明モデルのうち,海外の研究で実証的に支持されているインベストメント・モデルがあるが,まだ日本のIPV関係では証明されていない.そこで当該モデルが日本人のIPV関係にも適用されうるか否かの基礎的検証として,男女大学生268名を対象にIPVの架空事例および日本語訳したInvestment Model Scaleを使って,インベストメント・モデルを検証した.相関分析ならびに重回帰分析の結果,女子大学生については,「パートナーとの関係への満足度が高く,パートナーとの関係の代替策の質が低く,パートナーとの関係に対する投資の程度が高いと認識している人は,パートナーとの関係へのコミットメントが高い」というインベストメント・モデルの想定する仮説は支持され,当該モデルの構成概念妥当性が認められた.今後は,日本のIPV被害者を対象として実際のIPV関係に対して,インベストメント・モデルの検証を進める.


【総説】

人災・自然災害の長期的な影響に関するレビュー

藤井千太*1・大江美佐里*2.3・前田正治*1  
*1 福島県立医科大学医学部  *2 久留米大学保健管理室  *3 久留米大学医学部

本稿では,人為的災害の中でも,原発事故が含まれる産業施設災害と,船舶,航空機などの事故が含まれる輸送災害について,長期追跡調査が行われているものを取り上げて報告した.その長期経過には,事故との近接性や経済的要因などの関与が示され,特に配慮が必要な集団として,未成年とその親,職業として救援にあたる者が挙げられた.自然災害では,それら技術的災害と比較して被災後PTSDの有病率はしばしば低いことが示されていたが,発症例では3~4割が寛解せず,慢性的に経過していることも示されていた.その長期経過には,被災前のソーシャルサポート,家屋の損壊,転居がもたらす二次的な影響などの関与も示唆され,子どもの場合は親の精神病理の影響や,さらに長期的には他の外傷体験の影響も考慮することの必要性が指摘されていた.

 

バックナンバーの入手について

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(株)金剛出版 出版部 「トラウマティック・ストレス」担当
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