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第14巻第2号(2016年12月発行)抄録集

持続エクスポージャー療法とPTSD臨床

執筆者 金 吉晴

持続エクスポージャー療法(PE)は開発者のマニュアルに厳密に準拠して進めることが求められていると同時に,さまざまな状況にある患者に対してさまざまに工夫されながら,その応用可能性が検討されてきた.エクスポージャーという技法が強調されているが,その基礎となる感情処理理論においては,恐怖刺激,反応,思考などのさまざまな要素が不適切に関連づけれた認知構造(恐怖構造)が想定されており,その適正化のためにはエクスポージャーにおける感情面での馴化などの治療要素が恐怖構造の文脈の中に適切に位置づけられる必要がある.PEは薬物療法に反応しないPTSDへの効果も示唆されており,また児童,青年,複雑性PTSD,悲嘆などに応用され,さまざまな臨床場面で用いられている.PEを通じて回復への道筋を理解することは,一般的なトラウマ治療,支援にとっても有意義であると考えられる.


 

 PTSDのための持続エクスポージャー療法/PE療法―我が国における効果研究と普及

執筆者 齋藤    梓・鶴田   信子・飛鳥井 望

心的外傷後ストレス障害に対する持続エクスポージャー法/PE療法の効果については,すでに知られているところである.海外では,全米アカデミーズ医学院の「PTSD治療の効果評価」委員会報告11)により効果が認められ,日本においてもAsukaiら2)のランダム化対照比較試験において有効性が認められた.しかし,未だ日本では,実践現場で普及が進んでいるとは言い難い現状である.そこで本稿では,海外および日本において治療エビデンスを示した研究を紹介するとともに,PE療法の習得システムおよび実施上の留意点について述べた.PE療法の普及に際しては,正式な習得過程を経た上で,実施機関の理解,適切なケース選定,イメージ曝露中のエンゲージメントの調整といった点に注意を払う必要があると考えられた.


 

悲嘆に焦点化した心理療法におけるエクスポージャー

執筆者 白井 明美

本稿では,DSM-5に新たに導入された持続性複雑死別障害の概略について述べ,つぎに遺族を対象としたエクスポージャーを用いた認知行動療法を事例とともに概説した.これらの技法では,PE療法の目指す外傷体験の修正と再学習という目的とは異なる.つまり,遺族の中心課題が恐怖や脅威を伴う体験ではなく,死や故人への思慕であることから,遺族のエクスポージャーは死の事実を理解し,故人に対する非機能的な思考に気づき,その修正を図る上で役立つといえる.今後,犯罪や災害,自死遺族のように複雑性悲嘆とPTSDを併発する場合に,死や外傷に関連する認知がどのように変容するかについて縦断的なプロセスの分析を行うことや,国内での遺族に特化した心理療法について無作為化によるエビデンスの集積が望まれる.


 

ナラティヴ・エクスポージャー・セラピーの効果に関する文献展望

執筆者 道免 逸子・森 茂起

Narrative Exposure Therapy(以下NET)は,戦争・武力紛争など組織的暴力によるPTSDを対象に開発された認知行動療法である.曝露療法と証言療法を組み合わせたNETは特に複雑性PTSD治療に有効とされ,海外では主に難民を対象にエビデンスが蓄積されている.しかしわが国ではまだ幅広い導入には至っていないため,NETの先行研究をまとめて紹介し,その効果,特に市民生活由来のPTSD治療に対する効果を検討することを目的に文献展望を行った.市民生活由来のPTSDへのNETの効果の文献はまだ少ないが,PTSD症状の著しい軽減,罪悪感・解離症状・BPD症状・身体化症状の軽減が報告されていた.うつへの効果は,あるとするものと明らかでないとするものがあった.NETはわが国でもPTSDの有望な治療法となりえるが,導入の促進には,適応範囲の慎重な検討と,効果の厳密な検証の積み重ねが必要である.


 

東日本大震災で遺体捜索に従事した陸上自衛隊員が精神的健康を維持した過程の検討

執筆者 前野 良和

東日本大震災で遺体捜索に従事した陸上自衛隊員が,精神的健康を維持した過程を肯定的側面から明らかにすることを目的に,該当者11名に面接調査を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチで分析した.結果,培ってきた備え,実働で得られるやりがい,世間からの評価,家族の存在という要因とその過程が抽出され,隊員の精神的健康に,仲間,被災者,世間,家族といった他者とのつながりが必要であったことが考察された.


 

 

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学会事務所に残部がある第6巻2号までについては、希望される学会誌の巻号と郵送先を明記のうえ、1冊につき880円分の切手をそえて学会事務局までお申し込みください。
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(株)金剛出版 出版部 「トラウマティック・ストレス」担当
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