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第15巻第1号(2017年8月発行)抄録集

【特集 トラウマとcomorbidity2】

うつについて

執筆者 田中英三郎
 

トラウマ体験後のうつ病の有病率はPTSDと同様に高く,また両者は併存することがしばしば認められる.本稿では,うつ病とPTSDの関連に関して,疫学,症候学,生物学的要因,治療の観点から既存の知見を概観した.疫学調査によると,トラウマ体験直後にはうつ病,PTSD ともに高い有病率が報告されているが,その経過と関連要因はそれぞれ異なる可能性が示唆されている.症候学的には,興味/喜びの喪失,罪悪感,集中力低下,睡眠障害が共通しており,生物学的要因としては,前頭葉の低活動と扁桃体の過活動などが共通して認められている.治療に関しては,うつ病を合併したPTSDに対して持続エクスポージャー療法を実施し,うつ症状とPTSD 症状ともに軽減をみた自験例を提示した.

 

精神病におけるトラウマ:最近の研究の概観

執筆者 國分 恭子・松本 和紀
 

心的外傷(トラウマ)は,統合失調症をはじめとした精神病と関連することが知られているが,わが国ではこの問題についての関心はまだ十分ではない.精神病では,発病以前に子ども時代の虐待などによりトラウマを経験する割合は高く,トラウマは精神病発症リスクを高めると考えられている.また,発病後も精神病症状の体験や精神科治療に関連した強制医療(隔離,身体拘束,強制薬物治療など)がトラウマを引き起こすことがある.トラウマの問題は病状の慢性化や複雑化を引き起こし,治療を一層困難にしている可能性があるが,実際の臨床場面では精神病の患者のトラウマやPTSDは見逃されたり,過小評価されることがある.
近年,精神病とトラウマとの関連が明らかになるにしたがい,その治療法についての研究も成果を挙げている.今後は,精神病におけるトラウマの影響を考慮した対応や心理的アプローチの進展が期待される.

 

物質使用障害

執筆者 松本 俊彦
 

物質使用障害(substance use disorder:SUD)とさまざまなトラウマ関連の問題は密接な関連がある.本稿では,トラウマ関連障害のなかでも,特に外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder:PTSD)を取り上げ,SUDとの併存の実態,ならびに,両者を併存する患者を治療する際の課題を整理した.そのなかで,SUDとPTSDとは併存率が高く,他の精神障害の併存,重要他者との葛藤や身体疾患,子どもへの虐待,親権争い,ホームレス,HIV感染のリスク,家庭内暴力といった困難な現実的問題を抱えているなど臨床的特徴があり,それぞれ単独の場合に比べて,併存患者の治療は困難をきわめることを指摘した.最後に,PTSDとSUDの双方を視野に入れた治療法として,「Seeking Safety」を紹介した.

 
 
【原著】

性暴力被害者のためのワンストップ支援センターから精神科へ紹介された被害者の実情と治療の課題

執筆者 淺野 敬子・正木 智子・今野理恵子・山本このみ・平川 和子・小西 聖子
 

背景と目的:性暴力被害者のPTSD症状を速やかに改善することは,被害者の回復において重要であると考えられるが,ワンストップ支援センターを利用した性暴力被害者の精神症状および実情について国内の報告はほとんどない.本調査は,急性期性暴力被害者の実情を踏まえた介入方法と課題について検討することを目的にカルテ調査を行った.
方法:ワンストップ支援センター開設後3年半の間に,当該支援センターから精神科へ紹介された女性の性暴力被害者について,カルテ情報から対象者の属性,被害内容,診断名,治療転帰などの情報を収集しデータ分析した.
結果:対象者30名は平均年齢27.4±7.46歳であり,ASDまたはPTSD罹患者(PTSD疑いを含む)は83.3%であった.対象者のうち被害後3カ月以内に精神科を受診した者は56.7%であった.
考察:対象者のASD,PTSD罹患率は高い結果となった.本結果からワンストップ支援センターから紹介される性暴力被害者への介入方法を検討した.

 
 
【実践報告】

東日本大震災における若年被災者をもつ親への電話支援について―福島県「県民健康調査」から―

執筆者 及川 祐一・前田 正治・髙橋 紀子・柏﨑 佑哉・上田 由桂・久田  満・中山 洋子・増子 博文・矢部 博興・安村 誠司
 

今回の東日本大震災による複合的災害で多大な影響を受けた福島県において,沿岸部に在住する住民約21万人に対して質問紙調査を行い,あわせて電話や文書による支援を行った.その中でも子どもを持つ親に対して行った支援について,親から語られた困難さと,電話支援の有用性と限界について論じた.電話支援内容から,多くの母親が不安や困難を抱き子どもとの間で相互的な影響を及ぼしていることが明らかとなった.またこのような架電サービスは,今般の災害のように大量の被災者が広域に散在した場合には,きわめて有効な支援となり得る一方で,直接的な,あるいは継続的な支援ができない等の限界もあった.地域の支援ネットワークといかに有機的に連携を図るかが,このような架電サービスの成功の鍵を握ると考えられた.

 

バックナンバーの入手について

学会事務所に残部がある第6巻2号までについては、希望される学会誌の巻号と郵送先を明記のうえ、1冊につき880円分の切手をそえて学会事務局までお申し込みください。
また、7巻1号以降につきましては、下記までお問い合わせください。

(株)金剛出版 出版部 「トラウマティック・ストレス」担当
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