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JSTSS 学会誌

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第2巻第2号(2004年10月20日発行)抄録集

<総説>

生物・化学テロリズムが与える心理的影響

重村淳 (Jun Shigemura) 1), 2),
Molly J. Hall 1)
Derrick A. Hamaoka 1)
Robert J. Ursano 1)
1) Department of Psychiatry Uniformed Services University of the Health Sciences
2) 防衛医科大学校 精神科学講座

生物化学兵器を用いたテロリズムは、多数の人々に著しい恐怖をもたらす。生物化学兵器は強力な殺傷能力を持ち、特に生物兵器は、無臭で潜伏期がある上に、他者に感染しうる。そのため、たとえ実際に兵器が使用されなくとも、「使われたかも」という恐怖だけで心理的・行動的反応を引き起こしうる。過去の事例では、曝露されていない人々までが反応して医療機関に殺到し、本来の負傷者以外に「心の」負傷者が大量発生したことが報告されている。 よって、生物・化学テロリズム発生時には、大衆に向けて正確・迅速な情報を伝えることが求められる。適切なリスク伝達は各自の不安緩和に有用であり、混乱や流言など、集団レベルでの心理反応をも予防しうる。 このため、精神保健専門家には、テロ発生時の負傷者の選別、地域における事前教育・研修を通じた行政機関・他領域の専門家との連携など、従来の役割を越えた公衆衛生的見地からの役割が求められる.


 拷問とトラウマ

宮地尚子 Naoko T. MIYAJI, M.D., Ph.D.
一橋大学大学院社会学研究科地球社会研究専攻

本稿では、拷問の定義、拷問のトラウマについて考えることの社会的意義、拷問の実態、具体的内容とその影響、とくに精神的拷問の特徴について概説を述べるとともに、筆者が訪問した米国の支援施設の取り組みを紹介する。

拷問は意図的に人間の精神を破壊するよう工夫されたものであり、被害者の主体性や思考、判断が弄ばれつつ、
(1)自己像の破壊、
(2)他者や世界への基本的信頼感の破壊、
(3)加害者の内在化が、反復・強化されるものと考えられる。

被害者の回復支援には、狭義のトラウマ治療に留まらず、現時点でのストレスへの対処や家族・コミュニティへのアプローチなど、「多元的エンパワメント」が重要である.


<研究報告>

市町村保健師の二次的外傷性ストレスの観点からみたメンタルヘルス

山下由紀子 (聖マリアンナ医学研究所カウンセリング部)
伊藤美花 (武蔵野大学心理臨床センター)
嶋﨑淳子 (野の花メンタルクリニック)
笹川真紀子 (武蔵野大学心理臨床センター)
小西聖子 (武蔵野大学人間関係学部)

本研究では、東京都多摩地区24市町村に所属する保健師を対象として、職務上の傷つきの体験が及ぼすメンタルへルスへの影響を検討した。保健師255名に自記式質問紙を配布し、回答者数は113名であった。約8割の保健師が個人的もしくは職務上で、トラウマとなりうる、何らかの傷つく体験をしており、虐待などの外傷的出来事にも多くの保健師が関わっているという知見を得た。保健師のGHQ-12の平均得点は1.95点±2.84で、現在の精神的健康のハイリスク群は21.8%(24人)であり、全体的な精神健康度は良好に保たれていた。IES-R平均得点は、11.41点±16.14で、IES-R高得点群は全回答者の11.5%(13名)であり、最も強いストレスになった出来事として、約4割が「職務上の傷つき体験」を選択していた。「個人的体験」群と「職務上の傷つき体験」群のIES-R平均得点には有意な差があり、「個人的体験」のIES-R得点の方が高かった。「個人的体験」のIES-R得点の軽減に、研修やトレーニングが影響を及ぼすことが示された.


<資料>

厚生労働省版「災害時地域精神保健医療ガイドライン」について

金 吉晴 (国立精神・神経センター精神保健研究所)

平成13年度に災害時地域精神保健医療ガイドラインが作成され、厚生労働省より各自治体に配布された。災害後の精神的な反応はPTSDモデルだけでは説明できない。自然回復はストレス反応や適応障害だけではなく、PTSDなどの疾病にもみられる。多数の被災者を対象にした介入としては、自然回復の促進が必要であり、正常範囲のストレス反応や被害意識をPTSDなどの疾病と混同し、不安を増大させてはならない。症状が慢性化する者について積極的な教育支援が必要である。災害直後には見守り対象者のチェックや心理教育などの心理的応急処置が望ましい。災害弱者、多文化対応、報道機関との連携、援助者の精神健康維持なども課題となる.

 

バックナンバーの入手について

学会事務所に残部がある第6巻2号までについては、希望される学会誌の巻号と郵送先を明記のうえ、1冊につき882円分の切手をそえて学会事務局までお申し込みください。
また、7巻1号以降につきましては、下記までお問い合わせください。

(株)金剛出版 出版部 「トラウマティック・ストレス」担当
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