JSTSS Japanese Society for Traumatic Stress Studies -日本トラウマティック・ストレス学会設立準備会-
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  第6回大会シンポジウム
『子どもの性被害〜新しい課題〜』

座長:
・奥山眞紀子
・藤林武史


【演題】
「男児への性的虐待の臨床的検討」
杉山登志郎(あいち小児保健医療総合センター)
「施設内性被害への対応」
海野千畝子(あいち小児保健医療総合センター)
「性的被害を受けた女児の加害児との和解のプロセスの一経験」
都丸文子(国立成育医療センターこころの診療部)
「性虐待を受けた子どもの聞き取り面接のあり方に関する実践的検討:米国の司法面接をモデルとして」
西澤哲(大阪大学大学院人間科学研究科)
 
 
 

 
 
■総評: 奥山眞紀子(国立成育医療センターこころの診療部)
 

子どもの性被害や性虐待被害はこれまでもサバイバーの問題を中心に報告されてきた。しかしながら、未だ多くの触れられていない点がある。その一つが男児の被害である。男児の被害に関しては、国際的にも未知な面が多い分野である。杉山登志郎氏はその豊富な臨床経験をまとめられ、30名の男児への性的虐待に関して、他の虐待との比較および女児の被害との比較を行った。その結果、性的虐待は他の虐待に比べて発達障害の併存が少なく、解離性障害、PTSD、行為障害が有意に多く、被害男児では女児に比べてPTSDは有意に少なかったが、行為障害は有意に多く、特に性的加害が男児に多く、性被害男児は性化行動の一つとして、加害に向かう危険性を示していた。男児の性被害はなかなか表面に出てこない問題であるが、その可能性は少なくないことを理解して、早期に発見して対応することがその後の加害からの連鎖を防ぐ意味でも重要であることが示されていた。

また、児童福祉施設では子ども同士の性加害・被害が後を絶たない。そのような状況への対応は個別での対応が困難なことが多く、手が付けられてこなかった分野である。海野千畝子氏は子ども同士の性加害・被害が多発している施設において、性被害防止プログラム(ケアキットプログラム)を実施して効果をあげたことを報告した。しかし、性加害・被害が収まったものの、暴力の噴出が見られたことも報告された。あらたな防止プログラムとしての有効性と問題点が明らかになったと同時に、性加害・被害と暴力加害・被害の関係に関するメカニズムを明らかにして、性加害・被害の防止と同時に暴力加害・被害の防止を図る方法を見つける必要があると考えられた。

小学校低学年での学校での性加害・被害の報告は増加していると言われる。学校という場面は、加害児と被害児の分離が困難であり、回避が長期に続いてしまう危険がある。都丸文子氏によってそれを乗り越えるために行われた被害児と加害児のコミュニケーションを通しての「和解」のプロセスが示された。「和解」のプロセスでは一時期PTSD症状の増加も見られたが、終了後時点では被害児の症状は飛躍的に改善していた。この方法は性加害・被害でなくても取り入れることのできる方法である。言葉にしにくく加害児とのコミュニケーションが取りにくいと考えられる性被害のケースでもそれが可能であり効果を認めていることから、いじめ等の身体的暴力や心理的暴力のケースでも応用していくことで改善の可能性が示されたといえる。

最後に、日本でその取り組みが遅れている、性被害を受けた子どもへの司法面接に関して西澤哲氏より発表があった。司法面接(forensic interview)は主としてアメリカで発達してきたものである。日本で行った15例の司法面接の結果に関して、アメリカでのトレーニング内容とともに分析した。その結果、日本とアメリカの司法の相違があり、司法面接に期待されるものも異なることも明確になった。また、日本の場合は性被害が明らかになった直後に司法関与となるわけではなく、事件から時間がたってから司法面接が必要となったケースもあり、困難さが大きいものであった。更に、アメリカに比べて日本の子どもは言語的な開示が少ない傾向があり、それも困難さを増大させていた。今後、被害を受けた子どもの福祉のためには、日本の司法にあった形での司法面接のあり方が研究されると同時に、司法面接が司法の中で取り入れられていく必要性がある。また、子どもの供述の信ぴょう性に関しても日本での研究が少なく、今後の研究の必要性が示された。

全体に、活発な議論が行われたシンポジウムであった。性被害と言う強いトラウマは解離等の問題は言うまでもなく、加害の危険なども含めて、精神的危険が大きい。男児の被害、施設内での被害、学校での被害などはこれまで余り介入されてこなかったが、その実態や介入方法が示されたことは意義が大きい。また、性被害と言う証拠を取りにくい被害に対して、事実を明確にする方法として、今後その意義が大きくなると考えられる司法面接に関しての議論が開始された意義もまた大きかった。

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