JSTSS Japanese Society for Traumatic Stress Studies -日本トラウマティック・ストレス学会設立準備会-
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第7回大会 シンポジウム
『災害救援者の惨事ストレス対策:遺体関連業務における現状と課題』

座長:
大澤智子(兵庫県こころのケアセンター)
重村淳(防衛医科大学校 精神科学講座)

【演 題】
「救援者の遺体関連業務:メンタルヘルスへの影響と対策」
重村 淳(防衛医科大学校 精神科学講座)
「アメリカDMORTの取り組み」
大澤 智子(兵庫県こころのケアセンター)
「災害時の遺族・遺体対応に関わる諸問題〜日本DMORT研究会の取り組み〜」
村上 典子(神戸赤十字病院 心療内科)
「JR福知山線列車脱線事故現場での活動」
千島 佳也子(兵庫医科大学病院 救命救急センター)
 
 
 
 
総評
大澤智子(兵庫県こころのケアセンター)
重村淳(防衛医科大学校 精神科学講座)
 

近年、災害や事故に派遣される災害救援者の惨事ストレスが注目されるようになり、海上保安庁、自衛隊、消防などでは対策が行われるようになった。しかし、事故や災害現場で大勢の死傷者が出た場合のトリアージ、遺体管理にまつわる救援者への影響と遺族ケアとの連携には多くの課題が残る。このシンポジウムでは、2005年4月25日に起こったJR福知山脱線事故をきっかけに浮き彫りとなったこれらの課題について内容の濃い発表が行われた。

重村は、遺体関連業務が及ぼす救援者への影響の総論解説を行った。遺体が救援者に引き起こす反応には、以下の要因が大きく関わっているようだ:1)救援者の属性(若年、未経験、低い職位、独身、少ない社会サポート)、2)遺体に関わる度合い(暴露量に正比例)、3)遺体の状況(衝撃的な遺体)、4)遺体に対する救援者の同一化(感情移入の度合いと正比例)。これらの知見を考慮に入れた業務前、業務中、そして、業務後に取り入れることができる、具体的な対処策が提言された。災害救援者にとって、遺体関連業務は最も過酷な業務の一つであり、心身への影響を最小限にするためにも組織的アプローチが求められる。

大澤からは、1980年代から米国で始まった「災害時遺体管理対応チーム:Disaster Mortuary Operational Response Team(DMORT)」の視察報告が行われた。このチームは、法医学、検視官、法歯学、病理学者、指紋採取、DNA検査、精神保健などの分野を専門とする人々で構成され、死因の特定と早い遺体引渡しなど、遺族のケアをも念頭に入れた遺体管理を行う。アメリカには10の支部が存在し、9.11同時多発テロやハリケーンカトリーナのような災害や大規模事故現場に連邦政府の要請で派遣され、現地の監察医を指揮官として活動を行っている。このシステムを日本に導入するには乗り越えなければならない課題が山積みであるが、災害現場に「こころのケアチーム」が参入することの可能性を示している意味で大変興味深い。

村上は、JR福知山線脱線事故現場で浮き彫りになったトリアージ(要救助者の重症度・緊急度によって治療の優先順位を決める行為)が抱える課題について発表を行った。課題は大きく分けて2つある。第1は遺族ケアで、事故後、死亡原因や死亡時の状況を知りたいと訴える遺族やひどい遺体との対面が遺族の回復に悪い影響を及ぼしており、災害急性期から遺族ケアを念頭に入れた活動の必要性を訴えた。
 第2は、医療救援者のメンタルヘルスである。受傷者の受け入れ・治療を行なった医療関係者98名のうち56名から得た調査結果によると、「現地でつらい体験をした」と答えた人は医師職50%、看護職85%であった。黒タグに情報を書き込むことが遺族ケアおよび救援者のケアにも結びつくのではないか、と締めくくった。また、このような状況を踏まえ設立された「日本DMORT研究会」についても紹介した。

最後の演者である千島は、JR事故現場でトリアージ等の活動をした救急看護認定看護師である。当日、事故の一報を受けてから、自らが現場で遭遇したストレス因とその後、自身の中に沸き起こってきたさまざまな思いについて語った。現場においては、マスコミによる傷病者への容赦ない取材や黒タグ(死亡または救命不可能)と判断された傷病者の隠し撮り、野次馬などの目に常に晒されている中での活動がもたらす疲弊感、トイレや休憩スペースがない劣悪な環境での長時間活動の弊害などが挙げられた。また、活動後、自分の体験を語れる場や仲間を持つことの重要性、そして、現場で感じたことがどう消化され、看護師としての糧になっているのかが時系列に語られた貴重な発表であった。

災害現場での活動は「救援」が第一の目標であるが、遺体管理を適切に行うことは遺族ケアと救援者のケアに繋がることが示唆されたように思う。今後、これらの視点が惨事ストレス対策に生かされることを期待する。

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