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| 『災害・犯罪被害と早期介入』 |
企画:大田保之(長崎大学)、藤林武史(佐賀県精神保健福祉センター)
座長:藤林武史、元村直靖(大阪教育大)
指定討論者:金吉晴(国立精神・神経センター) |
| 【演 題】 |
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『企業組織における災害の早期援助』
梅澤志乃(ジャパンEAPシステムズ)ほか |
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『全国精神保健福祉センターにおける危機対応の実態について』
亀岡智美(大阪府こころの健康総合センター)ほか |
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『ガルーダ航空機事故被災者に対する支援とケア〜とくに行政組織との連携をめぐって』
前田正治(久留米大学医学部精神神経科) |
| ・ |
『犯罪被害者に対する早期支援の試み』
正木智子(被害者支援都民センター)ほか |
★第2回大会当日に配布した抄録集の中で、本シンポジウムの演者に掲載漏れがありました。関係者の皆様にご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。正しくは以下のとおりです。
演題A-2-2「全国精神保健福祉センターにおける危機対応の実態について」
演者:亀岡智美(大阪府こころの健康総合センター)、野田哲朗(大阪府健康福祉部精神保健福祉課)、廣常秀人(大阪大学大学院医学系研究科・精神医学)、渡辺洋一郎(渡辺クリニック)、金吉晴(国立精神・神経センター) |
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総評 大阪教育大学 元村 直靖 |
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災害被災者や犯罪被災者に対しての早期介入が実施されるようになって数年が経過した。これらの早期介入は、さまざまな機関が連携を持ちながら行われ、成果は上がってきたものの、介入のタイミングや介入の方法と内容については、いまだコンセンサスが得られていない。また、大規模災害だけでなく、個々の災害・犯罪被害者に対する早期支援が警察や民間支援組織を中心に試みられるようになってきたものの、全国的な拡がりはこれからの課題である。
まず、ジャパンEAPシステムズの梅澤氏は企業組織における災害の早期援助について紹介した。ジャパンEAPシステムズは、企業組織で働く社員とその家族に対し、メンタルヘルス関連のサービスを主に行っている。EAPの基本的目標は社員と企業組織のパフォーマンスの向上であり、これがあらゆるサービスの前提として考えられている。組織は様々な災害、事件の舞台ともなる可能性を持っている。例えば銀行強盗の恐怖に直面するのは利用客のみならず行員でもあり、震災や事故の被害者は地域住民でもあるが地域で働く人々でもある。ここ数年地域コミュニティでは災害時の心理的危機介入の必要性が強く訴えられるようになったが、一コミュニティとしての企業組織においては未だ外部専門家による介入がなされにくいのが現実ではないだろうか。災害時、社員が早期にストレス状態から回復していくことは、個々人の健康促進のみならず組織全体のパフォーマンスの早期回復という意味を持つ。また、企業組織において最も避けたい問題の一つに社員の自殺問題があるが、災害への危機対応スキルは自殺のポストべンションにも活用が可能であろう。この点からも、組織における危機対応の必要性は今後より高まると思われる。発表では、2002年9月に米国で起きた世界貿易センタービル爆破事件の被害を直接・間接的に受けた社員を抱える企業に対して行ったCISDによる緊急対応について報告し、企業組織における災害への早期援助について検討が加えられた。
次に、大阪府こころの健康総合センターの亀岡氏は、全国精神保健福祉センターにおける危機対応の実態について報告した。近年の社会情勢のなかで、わが国においても、地域・企業・学校などが自然災害や人為災害などによって、大小さまざまな被害を受けるような事態が稀ならず起こるようになっている。国際的には、さまざまな災害時援助におけるPTSD予防をはじめとした精神保健医療の重要性や被災者の心理社会的ニーズが一般にも認識されるようになり、赤十字や精神保健行政機関を中心とした危機対応システムが確立されてきている。わが国では1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに、被災者の精神保健医療が注目されるようになり、各自治体の保健所や精神保健福祉センターが、精神保健の専門機関として危機対応に関わる機会も増えてきていると思われる。全国の精神保健福祉センターにおける危機対応の実態や今後の課題などを検討するために、都道府県および指定都市の精神保健福祉センター60箇所を対象にアンケート調査を行った(回収率97%)。その結果、69%のセンターがASDやPTSDの個別事例への対応経験があり、55%のセンターが地域・学校・企業のいずれかで起こったトラウマテイック・ストレスの原因となるようなできごとへの危機介入を経験していることがわかった。このことより、危機時の適切な介入のためには、危機対応システムの整備や平常時からの機関連携が重要であると結論された。
3番目に、 久留米大学医学部精神神経科の 前田氏はガルーダ航空機事故被災者に対する支援とケア〜とくに行政組織との連携について発表した。1996年6月13日正午過ぎ、乗客260人を乗せたガルーダ・インドネシア航空865便は、エンジン・トラブルから離陸に失敗し、滑走路を大きくオーバーランした後、大破炎上した。ただちに福岡市消防局の消防車など60数台が出動し消火救助に当たったが、乗客3名が死亡し108名が負傷した。事故時の状況からすると、奇蹟的と思えるほど死亡者の数は少なかったが、福岡県下で起きた旅客機事故としては過去最大の事故であった。事故後直ちに福岡県警により事故対策本部が設置され、運輸省航空機事故調査委員会とともに事故の原因調査が行われた。一方、同年7月から今回のガルーダ・インドネシア航空機事故被災者に対する精神面への影響に関する調査計画が、福岡県民政部健康増進課と久留米大学医学部精神神経科学教室共同で立案された。今回のような技術的・人為的災害に関する官民一体となった精神保健調査は、当時では全く例がなく、意義や手法をめぐって様々な紆余曲折があった。しかし被災者の半数近くが福岡県の住民であることや、すでに外傷ストレス障害(PTSD)を呈した被災者がいたことなどから、同年9月にようやく調査・援助計画がまとまり、同年12月より実施された。
このように実際に支援活動がはじまったのは、事故後実に半年を経過してからであった。この遅れは行政との日ごろからの連携不足の故であるが、被災者の支援に関しては決定的といえるほどの不具合となった。実際に調査を開始してみると、1年後の2次調査でもほとんど症状レベルの改善を認めず、しかも被災者のほとんどは医療機関を受診しなかった。さらに問題であったのは、1年間に限った支援計画しか立てていなかったがために、被災者の状態の如何にかかわらず調査・ケアは中断の憂き目にあったのである。
現在は、PTSDに関する行政サイドの理解も当時よりもずっと深まっているだろうが、当時を回顧してみても依然として行政と専門家との連携がうまくいっている地域は非常に少ないのではないかと考えられる。福岡県ではこうした経緯を反省し、本年度よりPTSD専門家会議を新たに設立して、平時より行政との連携を図ることを試みている。このように、ガルーダ機事故調査ケアの詳細を報告し、そうした反省から始まった現在の福岡県の取り組みを紹介された。
次に、被害者支援都民センターの正木氏は、犯罪被害者に対する早期支援の試みと題した講演を行った。被害者支援都民センターでは、平成14年に施行された「犯罪被害者等早期援助団体に関する規則」に基づき、日本で始めて東京都公安委員会より犯罪被害者等早期援助団体の指定を受け、犯罪被害の直後から被害者、遺族に関わり、支援を行うようになった。このような早期の段階での被害者への支援は日本ではまだ実践が少なく、演者らも試行錯誤を重ねながら支援を行っている。被害の直後での支援では、まず混乱段階にある被害者にどのように接触し、支援を受け入れてもらうかということや、被害者の置かれている状況を正確に把握し、精神的なものだけでなく必要とされる支援を行っていくことや安全の確保など留意するべき点が多くある。今までの支援の実際を報告し、欧米での研究と比較し今後のあり方について検討を加えた。
最後に、指定討論者として国立精神神経センターの金氏は危機介入時の注意点について最新の研究成果についてまとめられた。
以上のように、本シンポジウムでは、行政、大学などの研究機関、民間支援組織から、地域や職域における早期介入のありかたや介入システムなどについて報告をいただき、心理的なデブリーフィングなど提供されるサービス内容の是非も含めて、今後の早期介入のあり方について論議を深めることができた。
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