JSTSS Japanese Society for Traumatic Stress Studies -日本トラウマティック・ストレス学会設立準備会-
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第5回大会シンポジウム「薬害HIV遺族支援をめぐって」

座長 山本耕平(大阪体育大学)、大山みち子(武蔵野大学)

【演 題】
「薬剤性HIV被害当事者運動の現状と今後の課題」
花井十伍(大阪HIV訴訟原告団)
「HIV被害者遺族の支援に求められるコーディネーター役割について−HIV/AIDS コーディネーターナースの実践から−」
島田 恵(国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター)
「心療内科医の立場からの遺族支援」
村上典子(神戸赤十字病院心療内科)
「HIV感染被害者遺族支援システム研究をめぐって−支援の現状と課題−」
山本 耕平(大阪体育大学)
 
 
 
 
総評 山本 耕平(大阪体育大学)
 

本シンポジウムは、薬害HIV感染被害者遺族の支援活動のひとつとして、2004年より行われた精神健康支援のための検討委員会における研究成果を、医療、看護、福祉さらに当事者活動の側面から報告したものである。

花井は、偏見や差別、スティグマを、薬害HIV患者の遺族が持つ苦しみの特有性のひとつであると言う。1987年頃から激しさを増していったAIDSに対する偏見と差別の中での苦しみは、死の恐怖にさらされた患者とその家族に多くの過酷な経験を強いる結果となった。さらに、薬害HIV患者の被害者救済は、エイズウイルス(HIV)の医療体制と連動してきたため、その医療体制の下で、家族が亡くなった病院を受診することの苦しさや、薬害HIV患者の遺族であることを最初から説明しなければならない苦しさが存在する事実も、薬害HIV遺族の個別性があることを明らかにした。さらに、現在までの当事者活動の成果を踏まえつつ、今後、遺族が支援を受けやすい体制の構築の必要性を指摘した。

村上は、心療内科医であり、かつ専門相談員として薬害HIVの被害者に関わってきた。その立場から、夫を薬害HIVで亡くした女性の事例を挙げ、慢性的な疲労、蕁麻疹、動悸、手の痺れを訴えながらも薬物治療が効果を示さなかった彼女に、グリーフワークを行ったところ治療的効果を示したことをもとに、実践的妥当性を持った支援方法であるグリーフワークについて報告し、HIV遺族が持つ個別性と、支援のありかたについて述べた。

島田は、遺族からの聞き取り調査によって明らかとなったこととして、「遺族からの相談内容は複雑で、問題の根底に身体的、心理的、社会的課題が絡んでいるため、それらを分析、整理」することが必要であり、「各課題を解決するために適切な専門家につないで、遺族が支援を受けられるように人や組織間の連携」を調整し、「支援後の経過も継続フォローアップし、相談対応と支援をシステム化する」社会的な活動が必要であることを指摘した。島田は、これらの活動を「コーディネート役割」とし、本来、「権利擁護」「知識・技術の教育」「親身の相談対応」「医療事故の予防」「医師と治療を狭義」5つの役割を持つコーディネーターナースの実践と比較し報告した。

山本は、HIV感染被害者遺族支援が困難となっている背景を「スティグマへの不安」「既存の相談機関の支援目的に遺族ケアが位置づいていない」「家族が治療を受けていた医療機関を訪れるためらい」「ピア(遺族相談員)中心の支援が持つ課題」「HIV医療に携わる医療従事者等の遺族等が抱える課題の理解不足と資源不足」の5点であると指摘し、なかでも、「ピア(遺族相談員)中心の支援が持つ課題」として、支援対象者が全国に散在していること、相談受理時のアセスメント能力が不足し、関係諸機関との連携が充分に行えておらず、遺族相談員への過剰な負担があると述べた。また、遺族支援システムを充実させる今後の課題として、セルフヘルプグループ(回復を目指した遺族のグループ)のソーシャルワーク機能や地域のサポートネットワークシステムの必要性を指摘した。

犯罪被害者等基本法の成立などを背景として、遺族のケアが重要な問題となっている。特に難しいのは、ケアを与えるべき医療者ないし医療組織が、家族の被害に責任があった場合や、被害の背景が複雑で社会的支援を求めにくい場合である。その一つが、この薬HIV遺族の課題であろう。今後、医療、保健、心理、福祉の各領域はこの課題に対峙する必要性を確認した。

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