JSTSS Japanese Society for Traumatic Stress Studies -日本トラウマティック・ストレス学会設立準備会-
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第9回大会シンポジウム
「トラウマ体験と加害行動:どのように対応するか」

座長:
藤岡淳子(大阪大学大学院 人間科学研究科)

【演 題】
「非行少年の被害体験とその対応」
浅野 恭子(大阪府子ども家庭センター)
「受刑者におけるトラウマ体験とその対応〜刑務所内回復共同体での実践」
毛利 真弓(株式会社大林組 島根あさひ社会復帰促進センター)
「被害者加害者調停が加害者と被害者にとって意味するもの」
野坂 祐子(大阪教育大学)
 
 
 
 
総評:藤岡淳子(大阪大学大学院 人間科学研究科)
 

加害行動の背景にあるトラウマ体験をどのようにとらえ、どのように対応することが加害者の回復につながるとともに、被害者と社会にとっても望ましいのか、という観点から3名の演者にお話しいただいた。加害行動の背景には複雑性トラウマがあることが多く、それを扱うことが全人的な成長と回復、再犯防止と償いにつながると考えている。

問題はどのように扱うかということである。CBTにおける反社会的認知の修正から入り、サバイバー的生き方を強調しながらトラウマ体験を扱う方法、回復のための共同体を作り、共同体によって支えながら全人的な成長を促す方法、説明・再犯防止・謝罪と賠償の三つの責任を負うことは、異なるアプローチをとりながらも、加害者のストレングスを信じ、見出し、強化していくという点では共通している。それぞれの臨床現場で熱心に実践に取り組み、的確な発表をしてくれた3人の若いシンポジストに希望を感じた。各人の感想をもって総評に代える。

浅野 恭子(大阪府子ども家庭センター)
大阪府で平成17年度より取り組んでいる、「性暴力治療教育プログラム」における、児童の被害体験への対応について報告した。 プログラムでは、自分自身が、虐待・いじめ・暴力等の「被害体験」からどのような影響を受けているかを考えさせ、それを通して、

1.被害者の視点に立つこと、
2.自身の被害意識を乗り越えて、「サバイバー」的な生き方を目指す

よう促している。

フロアーからは、CBTにおいて「感情」を扱うことの意味や、被害体験への直面化が「うつ」につながらないのかといった質問があった。認知は認知のみで存在しているわけではなく、感情につながっていることから、思考のあり方に軸足を置きながらも、「気持ち」を扱う意味や、被害体験による「影響」に注目させてはいるが、被害体験への直面化が目的とはなっていない点について、質問をいただいたことを通して、再認識した。
また、こうした治療教育の効果を数字で出す必要性についても指摘いただいたところであるが、今後、予後調査を重ね、効果について検討していきたい。

毛利 真弓(株式会社大林組 島根あさひ社会復帰促進センター)
加害者のトラウマ体験とそこからの回復について,官民協働刑務所である島根あさひ社会復帰促進センター回復共同体ユニットでの1年間の実践を報告した。いただいた意見の中では,「否認に打ちかつことが本当に加害からの回復に役に立つのか」,「被害者への具体的な償いの視点が弱いのではないか」,「否認が外れたときに抑うつ感や自殺年慮などはないか」などが印象的で,どれも考えさせられるものばかりだった。

加害者の回復にばかり目が向きがちであることを反省するとともに,自分自身の力量不足によって,受刑者の否認をうまく解き,「きちんと落ち込む」状態に持っていけていない不十分さも痛感した。浅野先生のご発表からは,同じ加害者臨床の先を行く先輩として刺激を受け,野坂先生のご発表からは,社会全体が「与えた/受けた傷を可能な限り回復できる」ように,広い世界に目を向ける必要性と気付かせていただいた。

野坂 祐子(大阪教育大学)
被害者支援を行ってきた立場から、子どもの性加害行動の治療教育および被害者加害対話の調停に関わるなかで感じたことを報告した。被害者の視点に立つ修復的司法について、J.H.Hermanは当事者の声から「被害者の尊厳が守られるコミュニティ」と「暴力を真剣に受け止めるコミュニティ」の必要性を指摘している。被害者を尊重することなく、暴力そのものを軽視し容認している社会そのものの変革が求められている。

暴力は被害者本人のみならずさまざまな人に多大な影響を及ぼすことから、傷つけられたコミュニティ全体をケアする視点が不可欠である。被害者加害者対話の実践から、対話は二者関係の調整に留まるものではなく、被害者と加害者をとりまくさまざまな人や機関をつなぎ、暴力によって損なわれた関係性や信頼感回復させていく機能をもつと考えられた。今後も実践を重ねつつ、さまざまな立場の支援者とつながっていきたいと思う。

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