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総評 中島聡美(国立精神・神経センター 精神保健研究所) |
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2005年に成立した犯罪被害者等基本法では、犯罪被害者の心身の回復を重点的な課題としてとりあげており、精神医療の現場での取り組みが求められている。精神医療の最も重要な役割は被害者が回復できるような適切な医療を提供することであるが、精神医療を必要とする被害者が医療機関を受診するまでにも様々な障壁が存在する。精神医療を必要とする被害者のどのくらいが実際に受診に結びついているのか、また実際に現場ではどのくらい診療がなされているのか、被害者の多くが接する司法や他の医療関係者は精神医療の必要性をどのように認識しているのかなどについては、まだ実証的な研究はなされていない。
本シンポジウムの演題は、今まで明らかにされてこなかった精神保健や精神医療の現場における犯罪被害者治療の実態と司法分野との連携の問題を取り上げたものである。
最初の2つの演題は、「犯罪被害者の精神的健康の回復支援における精神保健福祉センターの現状と課題」であり、山下氏から全国の精神保健福祉センターでの犯罪被害者相談の実態と現在の取組が報告された。電話および面接における犯罪被害者の相談は相談全体の約1%と少ないが、センターとしての重要な業務としての認識は強く、また治療・相談のガイドラインの開発や研修会の実施等についての要望が高いことが報告された。更に中島氏からは精神保健福祉センターにおける犯罪被害者の相談事例数に関連する因子として、犯罪被害者に関連する他機関の連携が重要であることが示された。
橋爪氏からは全国の精神科医療機関における精神科医師の犯罪被害者診療の実態が報告された。数としては少ないものの、過去に犯罪被害者の診療を経験した医師は約7割にのぼっていることは衆目するべき点であった。また診療事例数に関連する因子としてここでも他の被害者関連機関との連携があげられた。
有園氏は、前述の3つの研究とは逆の視点である司法関係者である弁護士と精神医療の関連についての研究を報告した。弁護士が被害者に関わる場合に心理的支援が必要だと感じることが少なくないにもかかわらず、紹介治療機関がないとの回答が過半数であったことから、心理支援のニーズがありながら精神医療に結びつきにくい現状があることが示唆された。
今回のシンポジウムの演題は今まで全く研究されてこなかった犯罪被害者の精神医療現場での治療や相談実態についてのものであり、今後の精神医療・保健の取組の基礎となる重要な研究として位置づけられるであろう。この研究報告から、数としては少ないものの、多くの精神医療関係者が被害者に関わる可能性があることが示され、精神医療関係者への治療や対応についての研修が重要であるといえる。また、4つの演題すべてに共通していた問題は、精神医療機関と犯罪被害者が関わる他の機関との連携であった。ニーズのある被害者をどのように精神医療に結びつけるかは、以下に司法関連機関等他の機関との連携を行うかにかかっていると思われる。今回の研究が実態のみではなく、現場の取組を促進するものへ発展することを期待したい。
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