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総評 白井明美(武蔵野大学) |
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家族との死別は人生上の普遍的な出来事である一方、その体験様式は多岐にわたっている。遺族の死別後の反応には悲嘆反応があることが一般的には認知されているが、自然災害や犯罪、事故、自殺などの突然死の遺族に関しての臨床的知見の蓄積が現在不足している。様々なトラウマ反応を考える上でも、こうした遺族への心理的・精神的支援は急務の課題である。今回は、臨床例または実践的研究を行っているシンポジスト3名とフロアと共に活発な議論が行われた。
前田正治氏(久留米大学医学部精神神経科学教室)は、「トラウマ・ケアとグリーフ・ケア:その相違とジレンマ」と題し、臨床上に犯罪や自殺などの突然死の遺族には回復に対する葛藤やPTSDという診断名に対する拒否感などが散見されることを端緒に、遺族と被害者本人との精神的症状の相違が見られることをRaphaelらの文献研究により明らかに示した。また、治療者には被害者本人とは異なったスタンスが求められることなどを具体的な提言も行われた。
大和田攝子氏(神戸松蔭女子学院大学)は、「犯罪被害者遺族の支援−子どもを亡くした両親へのアンケート調査から−」と題し、悲嘆反応や二次被害の弊害など多角的な視点から遺族への調査研究について報告された。結果からは遺族個人あるいは家族全体への心理教育的介入や、実質的な支援、父親を対象とした自助グループ、二次被害の防止など、長期的な支援を中心にさまざまなレベルでの介入や支援の可能性が示唆された。
白井明美氏(武蔵野大学心理臨床センター)は「外傷的死別における遺族のトラウマ反応の評価」と題し、病死を除いた犯罪事件や交通事故、災害等による死別体験をStroebeらの提唱にならい「外傷的死別」と定義した上で、海外での外傷的死別者の臨床研究を概観した上で、日本での遺族のPTSD症状の評価に関する調査研究について中間的な経過報告を行った。
質問・討議では、遺族には死別からの「成長へのプロセス」が必要ではという意見に対し、座長の大山みち子氏から治療者からの単なる「成長促進」的な働きかけは、大きな被害に遭って家族を喪う出来事の大きさを考えると、却って弊害となる可能性もあり、「回復」や「成長」という言葉はその方自身の治療過程において慎重に考え、用いる必要があるという意見が出された。
また遺族支援に携わる臨床家にとっての日ごろ行っている様々な工夫について質問が出され、遺族本人だけでなく亡くなった本人を意識して配慮する姿勢の必要性などもシンポジストから意見として挙げられた。
今回のシンポジウムでは、人生上の大事を受容する治療者の深い人間性と同じように、当学会としてはPTSDと悲嘆反応など関連するトラウマ反応全般に関する実証的な研究の蓄積が早期の課題であることが共通理解とされた。
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