JSTSS Japanese Society for Traumatic Stress Studies -日本トラウマティック・ストレス学会設立準備会-
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『地域社会を巻き込む災害と長期的ケア』
企画:安藤幸子(神戸市看護大学)、加藤 寛(こころのケア研究所)
座長:安藤幸子(神戸市看護大学)、広常秀人(大阪大学医学部)
 【演 題】
『えひめ丸沈没事故被害者の支援を通して』
加藤 泉(愛媛県宇和島中央保健所)ほか
『阪神・淡路大震災後の高齢者への長期的ケア』
大野かおり(神戸市看護大)
『子ども達の長期的影響:阪神・淡路大震災後7年目の大規模調査から』
加藤 寛(こころのケア研究所)ほか
 
 

 
 
総評: 神戸市看護大学 安藤幸子
 

本シンポジウムでは、地域社会に大きな影響を与える災害や大事故の被災者に対する長期ケアに焦点を当て、効果的にケアを提供していくためのケア提供システムの構築、他機関との連携、被災住民のスクリーニングの方法について検討された。被災者のストレスや健康問題が長期に渡ることを考えた場合、早期のケアだけではなく中・長期のケア体制をどのように作り上げていくかは、重要な課題と考えられる。
 
まず宇和島中央保健所の加藤保健師からは、えひめ丸沈没事故被害者の支援において、早期に専門家を招き長期的視点でケア対策を立案・実施したこと、人員の増員やケア対策班の設置など保健所において積極的なケア体制整備が行われたこと、早期から精神面のみならず身体・生活面を含めた個別ケアが実施されたこと、関連機関と積極的に連携したこと等、早期のケア提供システムの構築と他機関との連携、包括的・継続的なケアが効果的であったことが報告された。
 
神戸市看護大学の大野教員からは、阪神・淡路大震災後、長期に渡り被災者の健康と生活を支援するためのボランティア活動を継続してきた体験をもとに、兵庫県看護協会をはじめ他機関と連携しながら行ってきた被災者への支援活動及び支援システムの概要が報告された。また被災後のストレスや健康問題が長期にわたり、仮設住宅から恒久住宅へと生活が変化すると共に、新たな生活問題・健康問題が現れてくることも指摘された。

またこころのケア研究所の加藤氏からは、児童への心理的影響を効果的にスクリーニングするためには、自己報告式より家族からの聞き取り調査の方が効果的であったこと等が報告された。

各シンポジストの報告後、主に支援者の二次受傷の問題とボランティアで支援活動を継続していくための資金問題について意見交換された。支援者の二次受傷に関しては、関係者による会議、カンファレンスでの活動報告や問題点の共有、また会議後の非公式な食事会などで体験や気持ちを語ることが、二次的な受傷を緩和するのに役立ったのではないかという意見が出された。また阪神淡路大震災後のボランティア活動においては、ケア提供者自身も被災者であったことから、活動に対するモチベーションが高く、メンバーの凝集性も高かったこと、ケアを提供しながら被災者とケア提供者が相互に体験を分かち合う過程でケア提供者自身も癒されていくプロセスがあったことが語られた。また現在活動している学生ボランティアは、被災当時は中学生であり、何も出来なかったという思いを抱いていたが、このボランティア活動を通して自分自身が役に立っているという自己効力感を感じると同時に、学生自身のトラウマも癒されているという説明があり、支援活動がケア提供者へ及ぼすプラスの影響について示唆された点が印象的であった。
 
ボランティア活動で長期的なケアを継続していくためには、活動資金が不可欠である。大野さん達の活動は初期には人、エネルギー、時間、資金ともに持ち出しであったが、看護協会や他機関と連携することで資金、情報、人が得られるようになり活動が維持されたこと、また初期のボランティア活動が看護協会の事業あるいは県の施策へと結びついていった事が報告された。
 
本シンポジウムより、大災害、大事故後の長期ケアにおけるポイントと今後の課題として次のような点が挙げられると思う。
  1. 大災害、大事故の発生時には、中・長期を見据えたケア対策を立案すると共に、早期にケア提供システムを構築していくことが必要である。
  2. 被災者のケアにおいては心の問題だけではなく、身体、生活面を含めたトータルなケアが必要である。
  3. 長期的かつ効果的なケアを提供していくためには他機関との連携が不可欠である。
  4. ボランティア活動を長期に継続していくためには、資金調達が課題である。また有効なボランティア活動は、公的な事業や施策に発展する可能性がある。
  5. 被災者の支援のみならず、支援者のバーンアウトや二次受傷を予防するための支援体制も整える必要がある。
  6. 心理的ケアニーズの高い児童をスクリーニングするには家族からの聞き取り調査の方が効果的である。
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