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| 『職務と惨事ストレス』 |
| 座長:前田正治(久留米大学)、小西聖子(武蔵野女子大) |
| 【演 題】 |
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『日常消防業務とPTSD−消防隊員に対するメンタルヘルス調査の結果から』
進藤啓子(西南大学文学部社会福祉学科)ほか |
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『消防隊員の惨事ストレスの規定因』
畑中美穂(筑波大学心理学研究科)ほか |
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『消防士の惨事ストレス対策−東京消防庁の取り組み』
松井 豊(筑波大学心理学系) |
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『海外派遣任務に従事する自衛隊員のストレスコーピングに関する実態調査−海外派遣におけるストレス調査』
澤村岳人(防衛医大研究センター行動科学部門)ほか |
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本シンポジウムは、消防隊員や警察官、自衛官など、身の危険を賭して職務を全うしなければならない人たちを襲うストレス、すなわち惨事ストレス(以下
CIS)に関するセッションである。オーストラリアで起きた山火事の消火活動に従事した消防隊員に対するマクファーレンらによる有名な調査をはじめとして、とくに消防隊員とCISとの関係は非常に密接なものがあり、4人のシンポジストのうち3人は消防隊員のCISに関するものであった。
まず進藤氏は、福岡市消防局所属の消防隊員870名に対するメンタルヘルス結果について報告した。IESRやGHQなどを用いた質問紙調査(一次調査)を行い、IESRの結果を基にPTSD危険群を抽出し、さらにPTSD臨床診断面接(CAPS)を実施した(二次調査)。一次調査の結果、IESRで25点以上を示した事例群が15%を占めた。そして二次調査のCAPS面接でPTSD診断が確定したのは3名であり、推定される現在有病率は1.2%であった。この結果は、一般の就労者に比べるとかなり高い率であると考えられ、CISの影響がかなり現れていると考えられる。
続いて畑中氏は、総務省が行った全国の消防隊員に対する大規模な疫学調査結果を報告した。すなわち全国の消防隊員に対し、無作為抽出した1914名に郵送法にてIESRやGHQを用いた調査を行った。その結果、IESR総得点でみたPTSD事例群は15.6%であり、進藤氏らの調査結果にきわめて近似した結果となった。さらに勤続年数や職階がIESR得点に関係していることも明らかになっている。本報告は全国規模で調査を行った点が意義深く、CISに対する対策もまた全国規模で行う必要があることが感じられた。
さて以上の報告を受けて、松井氏はCISに対するケアのあり方について、先駆的にシステム作りに取り組んでいる東京消防庁方式を紹介しつつ持論を展開した。基本的にはミッチェルらが発展させたCISデブリーフィングを参照にしながらも、より弾力性をもたせた運用を心がけている点が印象的で、氏はそうした修正モデルの方が日本の現状により適していると訴えた。「デブリーフィング・アレルギー」が強い最近の国内外の風潮ではあるが、そうした逆風の中でも氏は着地点を見出そうと堅実に努力されており、その姿勢には学ぶべき点は多い。
最後に、澤村氏はゴラン高原にPKO部隊として派遣された自衛官の精神保健調査結果について報告した。GHQなどの質問紙調査の結果では、派遣自衛官の精神保健状態はきわめて良好に維持されており、それはむしろ通常勤務の自衛官よりも安定的であるようだった。そして、この安定性は隊員のストレス対処のあり方にも反映されていた。このような逆説的な結果は、派遣自衛官の脆弱性の低さ、すなわち健康度の高い隊員が選ばれて派遣されているといった事情を勘案しなければならないが、評者にはむしろ派遣隊員が激しい戦闘に巻き込まれたり、死者が出るような状況に遭遇しなかったという好運性の方が大きいように思えた。すなわちCISを引き起こすような状況にたまたま遭遇しなかったがために、PTSDや隊員の士気低下を招かなかったと考えるべきではないだろうか。今後自衛官は、イラクなどより一層危険な地域に派遣される可能性が高く、こうした縦断的調査の重要性はますます高まっているといえよう。
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