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総評:坂口幸弘(関西学院大学人間福祉学部) |
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本シンポジウムでは、救急医療現場における家族・遺族支援のあり方について、それぞれの立場で実際の支援にかかわってきた4名のシンポジストから話題提供をしてもらい、その後に質疑応答を行った。
まず村上氏(神戸赤十字病院)は、心療内科医の立場から、複雑性悲嘆が疑われる受診者の多くが突然の死別であるとしたうえで、突然死の遺族に対する治療の実際を報告した。いくつかの症例は、突然の死であっても、遺族が自分なりにその死を少しでも納得できることが適応プロセスにおいて重要であることを示唆し、医療者の説明や死因の解明の重要性をあらためて強調するものであった。
次に黒川氏(龍谷大学)からは、救命救急センターに心肺停止状態で搬送され、外来死した患者の遺族を対象とした調査の結果が報告された。103名から回答を得た質問紙調査の結果によると、回答者の27%にうつ傾向がみられ、43%に複雑性悲嘆傾向が認められた。うつ傾向や複雑性悲嘆傾向の遺族で追加のインタビュー調査に応えてくれた人に共通する特徴は、死別時に一人で対応したことや、死について他者より責められたように感じる状況があったことであった。
続いて重村氏(日本医科大学)は、脳死患者家族のケアにあたる心理士の立場から、インタビューとカルテの情報に基づき、脳死患者家族の危機場面における心理について報告した。それによると、脳死患者家族において、急性ストレス反応が見られる場合があることや、「脳死」そのものや病状に対する理解が困難であることなどが示された。重村氏によると、「脳死」に対する納得のいかなさが、縺れた糸のごとく、患者家族の物語を進みづらくしているのではないかと考えられた。
最後に中西氏(兵庫教育大学大学院)からは、移植コーディネーターとしての職務経験に根ざした問題意識から実施された質問紙調査の研究成果が報告された。心臓停止後の腎臓提供を経験したドナー家族198名のうち、心理的適応(抑うつ、PTSD)を標準化された尺度で評価した結果、両尺度ともに臨床的基準値以上と判定されたのは46名(23%)であった。抑うつに関する結果は黒川氏が行った外来死患者遺族の調査結果とほぼ同程度であることから、臓器提供したことで、しなかった場合に比べて遺族の死別悲嘆が一概に軽減あるいは増悪することはないと考えられる。しかし、臓器提供に対する満足度や肯定的・否定的評価は、ドナー家族の死別後の心理的適応に影響することがわかった。よって、移植コーディネーターには家族の喪失感に配慮しつつ、家族が臓器提供したことを後悔しないような係わりを持つことが求められる。
質疑応答においては、遺族への支援を提供する側が留意すべき事柄として、遺族によっては法律上の問題や経済的問題を抱えている場合もあるため、精神面へのサポートにとどまらず、各方面の専門家につなぐことも状況に応じ必要であることが論じられた。また調査研究の限界として、調査への協力者からの回答のみが分析されており、必ずしも対象者全体の実態を反映していない可能性が指摘された。
今回、事例や調査研究を通して、突然死や臓器移植をめぐる家族あるいは遺族の思いや心身症状の実態が浮き彫りにされ、家族・遺族支援の必要性が再確認された。また、具体的な支援についても、突然の理不尽ともいえる死を経験した遺族や、臓器提供に同意した遺族が、その死を自分なりに少しでも納得できるように医療者が死の前後において関わることの重要性が強調された。救急医療現場での家族・遺族支援に関する研究や報告はまだまだ少なく、この領域のさらなる発展を願うとともに、本シンポジウムがその契機の一つになれば幸いである。
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