|
 |
 |
 |
 |
|
 |
| |
JSTSS
第2回大会(2003.3) での講演から
『急性および慢性PTSDに対する力動的精神療法』
Charles Marmar, M.D.(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)
|
|
 |
|
 |
|
 |
| |
| |
 |
| ■ |
力動的アプローチの持つ意味 |
| |
 |
力動的アプローチによる外傷ストレスの理解において強調されるのは、外傷的事象がその人の自己概念と他者の捉え方に与える強い影響、意識的にせよ無意識的にせよ、トラウマによって自他の表象が危険なほど弱体化したり強大化(powerful)したりすることで、それまでの自他の捉え方との間に矛盾が生じて引き起こされる感情、そして、その矛盾と苦しい感情に対処するために動員される防衛機制の3点である。また心理力動的アプローチでは、外傷的事象とその余波期間内の、ある特定の瞬間への意識的無意識的な関連性も強調される。外傷により賦活されたテーマは、現在の問題と、発達段階早期に形成された自他の捉え方や感情、防衛機制との橋渡しをするものと考えられる。成人になってからのトラウマは、前エディプス期またはエディプス期特有のテーマを賦活させ、特にそれらは母性による保護、安心感、信頼、感情のコントロールや、資格、才能、競争、報復への恐怖などによる葛藤と関係しているようである。
| |
 |
| ■ |
トラウマと防衛機制、転移と逆転移 |
| |
 |
トラウマを制御できず乗り越えに失敗すると、自分自身や馴染みの人に外傷的幻滅を生じて解離やスプリッティングといったより原始的な防衛機制を用いるようになり、感情の制御は不完全となり、衝動性は高まり、それ以後の自己愛的な傷つきに対しても脆弱性が増大するといった永続的で退行的な性格変化に至ることがある。これらの心理的混乱は、PTSDにおける、アドレナリン神経系による生物学的な感情制御の不調と相互に影響している。この退行の結果、トラウマの犠牲者は状況にそぐわない未熟で葛藤をはらんだ対人関係のパターンを繰り返す。その関係の起源は発達段階早期にあり、トラウマに曝露される以前はより適応的なパターンで抑制されていたものであるが、曝露の結果としてのその後の対人関係は一層混乱し、治療関係では転移反応が強化される。
| |
 |
| ■ |
治療の目標 |
| |
 |
治療の目標はトラウマを処理し、外傷後の退行から引き戻して機能を回復することにある。その技法には以下の段階が含まれる。すなわち、(1)患者が感情的に圧倒され再び心的外傷を受けるだろうという恐れに立ち向かうことで、治療同盟を確立する。(2)回避に対抗し、抵抗しがたい気持ちの調整を行うことで、感情的に耐えうるレベルで繰り返しトラウマを語らせる(長時間暴露に似ているが、曝露時点での緊張の再体験をそれほど重視しないアプローチ)。(3)犠牲者であり、もろくて無力で傷つきやすく、恥ずべきであるといった、トラウマによる未解決で弱体化した自己概念を同定する。(4)(しばしば)意識的には自覚されにくく社会的な受容度も低い概念であるが、加害者、破壊者であり、そのため生き残るに値しないという、トラウマによって拡大した自己概念を同定する。(5)自分や他人を犠牲にしたという罪の気持ちから生じる自責の念を、弱体化した自己概念と結びつける。(6)トラウマにより賦活され、危険なほど弱体化もしくは破壊的なほど拡大した現在の見方を、発達段階早期に由来する葛藤と結びつける。(7)患者が治療者に対して抱く、トラウマを語ることに耐えられずもろく壊れやすいという見方と、また一方ではサディスティックで侮蔑的、懲罰的であるという見方の、並列的な転移感情を探索する。(8)トラウマが語られることによって治療者側に生じる、恐怖、悲しみ、無力感、もしくは侮蔑、嫌悪や道徳的非難といった逆転移感情をうまく処理し、そして、(9)外傷的事象によって引き起こされる感情や意義を、患者が安全に再体験して乗り越えられる機会となるよう、治療を終結させる、という9の段階である。当日は以上の技法について、2症例(ニューヨーク世界貿易センタービルテロ事件を生き延びた消防士の急性ストレス障害例と、事故の際に兄弟の死を目撃した交通事故サバイバーの慢性PTSD症例)の呈示を通して説明する。(第2回大会招待講演から)
|
 |
|