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| 『心的外傷の心理療法II』 |
| 座長:田中究(神戸大学大学院医学系研究科)、清水將之(関西国際大学) |
| 【演 題】 |
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『心理療法における「隠すこと」「埋めること」の意味について
喪失と心的外傷』
田中 究(神戸大学大学院医学系研究科) |
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『心的外傷とロールシャッハテスト』
本多雅子(神戸大学医学部附属病院精神神経科) |
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『プレイセラピーにおける外傷の包容-養護施設における治療構造をめぐって』
森 茂起(甲南大学文学部人間科学科) |
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本シンポジウムでは、オーソドックスな心理療法における心的外傷を抱えるクライアントの表現について取り上げた。本多氏はロールシャッハテストのなかで、特にIIカード、VIIカード、Xカードを取り上げ、これらのカードに関するクライアントのコメントに、心的外傷を読みとり得ることを述べた。こうしたクライアントでは、来院時主訴や現れている症状には心的外傷との関連が示唆されないために、クライアントの表現はうまく解釈されないもの、あるいはとるに足らないものと見なされることがあると指摘した上で、これらの反応表象は、よく観察すれば、被害感を濃く表現しつつ、同時に潜伏する怒りや破壊性を伴ったものとして捉えうると述べた。
また森氏は、児童養護施設での心理臨床における被虐待児の事例から、子どもが治療構造の枠外しを繰り返し試みるときに、虐待-被虐帯の枠組の再演であり、施設内での生活上の部屋という枠組みが心的外傷に繋がる恐怖をもたらし退行を許さない枠として治療場面で働いている場合があることを指摘し、いったん枠を外すことで新たに抱えられ退行できる枠組みを再構築できることに配慮する必要性について述べた。また、心理療法の中での言語的、非言語的な子どもの歴史の物語性の回復が強調されるが、身体の統合性を感覚運動的なあそびの中で回復することが子どもたちの物語性の弱さを補い、物語性の回復を促していくことに連なっていることを取り上げた。
田中は箱庭療法における治療過程を紹介し、アイテムを埋めることが外傷のテーマと関係していることを見いだし、クライアントの抱える課題の結節点として機能し、治療の転回点となることを述べ、その際に治療者がクライアントの表現に参加することによって表現が促されたことを報告した。こうしたことは成人例にも見られ、心的外傷を抱える子どもたちの繰り返される「隠れん坊」や「hide
and search」にも同様の機序があることが述べられた。
指定討論者の塚本氏は、本シンポジウムで紹介された心理療法がいずれもオーソドックスなものであり、トラウマを直接取り扱っているものではないが、いずれの治療にもクライアントに内在している力を育てることの眼差しが含まれていることを指摘した。確かに、日常臨床の中で心的外傷はいつでもそれとして語られるわけではない。心的外傷を直接的に取り扱う治療方法が必要な場合もあるが、心的外傷への気づきを共有する時間があって初めて未来への歩みを再開するクライアントもいる。心理臨床は一定の枠組みはあってもインプロヴィゼーションの連続である。治療者とクライアントの持つ柔軟性や豊かさが、相呼応して、一見不協和音を呈しているように見えてもよい演奏となるのかもしれない。心的外傷を扱う治療では、治療者側の二次外傷がしばしば議論されるが、臨床家のささやかな工夫や知恵の分かち合いもまた必要である。本シンポジウムではそうした場が形成され、自らの臨床を振り返り、臨床の工夫や知恵が共有されたように思われた。
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