| |
 |
| ■ |
総評: 大澤智子(兵庫県こころのケアセンター) |
| |
 |
外傷に関わることにはリスクが伴い、援助者も例外ではない。その影響は二次的外傷性ストレス、代理受傷、二次受傷などと呼ばれ、わが国においても、援助職を対象に調査が行われるようになった。しかし、「援助職」も多種多様で、職業役割の違いからそれぞれの援助者が被るストレスや影響には違いが存在し、「援助ストレスのスペクトル」が描けると思われる。例えば、共感が治療関係の核となる臨床家と、外傷体験を目の当たりにはするが内面への影響が少ない消防や警察が、両極に、そして、その間に看護師が位置すると考えられのではないか。このようなことを念頭に置きならが、3名の演者からの報告を聞いた。
広常氏は、救急救命センターで働く看護師を対象に行われた調査の報告を行った。IES-RとGHQ12の平均点とハイリスク者の割合は、それぞれ16.3点と24.4%、7.2点と87.8%と非常に高かった。医師や同僚からの暴言や非支持的な態度、患者の突然死、自分と同年代の患者の死を体験している人ほど両得点が高くなる傾向があり、経験年数が短い看護師の方がそうでない看護師よりIES-RとGHQの得点が高かった。
次に、殉職事故を体験した消防士(N=115
)を対象とした調査結果を加藤氏が発表した。事故7ヶ月後であってもIES-RによるPTSDハイリスク者は15.7%であり、事故直後の面接で臨床的にハイリスク者と診断された人の36.7%はPTSDハイリスク者、16.7%がうつ病ハイリスク者と非常に高いことが報告された。このような外傷体験の場合、PTSDのみならず、組織と個人が喪失に対する悲嘆をどう乗り越えるかが重要になるとの指摘がされた。
最後は上田氏が警察官1051名を対象に衝撃を受けた事案とその影響を調査した。その結果、活動回数が多く、生活ストレスが高く、情緒不安定な性格で、消極的なストレス対処法を使用し、周囲からの期待が高いと感じている人の方がそうでない人よりIES-Rの得点が高い傾向が見られた。また、二次受傷に大きな影響を与えるのは、バーンアウトの「情緒的消耗感」と「脱人格化」であり、逆に二次受傷を軽減するのは「職場における情緒的な支援者」を得ることであった。
これらの発表から浮き彫りになったのは、以下の事柄であった。二次受傷や職務ストレスを被った援助者に対して誰がどのような介入をするのが妥当なのか;このような調査をする際、二次受傷をどのように定義するのか;職務ストレスあるいは職務の何を対象に二次受傷を測定するのか;二次受傷の影響をどのような現象で測定するのか(そして、二次受傷をどの尺度で測定するのか);職務上、トラウマ体験に曝されることが予期できる場合、彼らを精神的に準備させることは可能なのか、可能ならば、それはどうやってできるのか。
このシンポジウムでは臨床家を対象にした調査報告がなかったのが残念である。次年度の学会では、是非とも臨床家の二次受傷研究が報告されることを期待する。
|