JSTSS Japanese Society for Traumatic Stress Studies -日本トラウマティック・ストレス学会設立準備会-
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第6回大会シンポジウム
『救援者のための包括的なメンタルヘルス対策』

座長:重村淳 (防衛医科大学校 精神科学講座)
大澤智子 (兵庫県こころのケアセンター)

【演題】
「ゴラン高原PKO派遣隊員のメンタルヘルス −緊迫したレバノン紛争の影響−」
清水 邦夫 (防衛医科大学校 防衛医学研究センター 行動科学部門)
「米国救援組織における惨事ストレスへの取組みとピア・サポートの現状」
蒲田 福司 (海上保安庁総務部秘書課健康安全係)
「アメリカ陸軍兵における平和維持活動の影響:既婚者と独身者との差」
重村 淳 (防衛医科大学校 精神科学講座)
「消防職員における惨事ストレスの耐性要因について」
大澤 智子 (兵庫県こころのケアセンター)
 
 

 
 
総評:重村淳 (防衛医科大学校 精神科学講座)
大澤智子 (兵庫県こころのケアセンター)
 

救援者のメンタルヘルス(MH)の特徴および重要性は社会的にも注目を浴びており、「惨事ストレス」(critical incident stress: CIS)という用語も本学会レベルでは定着したように感じられる。そういう中、救援者のMH対策としてCISが注目を浴びているが、更なる研究および議論が求められているのが現状である。このシンポジウムでは、日米の様々な救援部隊の発表を通じて、今後の対策への提言を行う密度の濃い内容となった。

清水は、ゴラン高原の国連平和維持活動(PKO)を担った自衛隊隊員の調査を発表した。過去の当学会でも先行部隊の報告は行われてきたが、今回の発表は、近隣のレバノンで紛争が勃発している期間中の2部隊を調べたものだった。その結果、対象者では、GHQ、STAIにおいて精神的健康度が維持されていた。報告されたストレス因は、必ずしもCISだけでなく、他国部隊との人間関係・生活環境・帰国後の処遇など様々な領域に及び、2部隊の間でも異なっていた。

蒲田は、米国沿岸警備隊、ロックビル市消防局などを視察し、職場内ピア・サポートの現状に関する報告を行い、ピアに要求される条件、募集方法など、具体的なノウハウを発表した。また、滅多に見ることの出来ない、沿岸警備隊のプロモーション・ビデオも上映してくれた。実は、当初の予定では、海上保安庁における現在のMH対策にまで議論する予定だったが、時間の関係でそこまで至らなかったことが心残りである。これは、次回以降の発表に期待したいところである。

重村は、ボスニアでのPKO活動に従事した米陸軍兵951名を対象とした意識調査を実施し、派遣の長所と短所について、独身者と既婚者の2群に分け、解析を行った。その結果、長所のみを挙げる人が両群に存在し、独身者の方が多くの「長所(金銭的メリット、自己の成長、夫婦や恋人との絆)」を、逆に、既婚者がより多くの「短所(金銭的破綻、夫婦や恋人関係の悪化)」を記述した。この発表は、任務には無関係な家族関連の要因も隊員のMH対策には欠かせないことを示している。

大澤は、消防隊員1432名を対象とした大規模調査を実施し、CISの緩和要因を特定した。対象者を経験年数で区分したところ、若年層においては、体力・運動能力など、身体能力の高さが精神的健康と相関していた。一方、中堅層では、指導力・決断力・優しさなどの精神的自己が精神的健康と関連していた。CIS経験を通じた成長の度合いが幸福度・人生満足度の向上と相関したことも併せて報告された。この結果は、日常の健康対策における一次予防対策において強調すべき項目を示唆している。

以上より、救援者のMH対策として、以下が提言出来る。

  1. 救援者のMH対策は包括的・継続的なものが望ましい。
  2. 救援者のMH対策は、CISに限らず、諸々のストレスをも対象とするのが望ましい。
  3. PKOなど派遣団体への対策は、派遣前・中・後の各段階において、講じるのが望ましい。
  4. 一次予防対策としてピア・サポート、健康向上対策の導入が考えられる。

1.2.3.は、救援者のストレス因として、対人関係(部隊内、夫婦間)、生活環境、帰国後の処遇などが清水と重村の発表で報告されている。3.については、大澤が発表した年齢別の健康度と関連する項目がヒントとなる。また、蒲田が報告したピア・サポートは、4.を考える上で今後注目される概念である。例えば、MH対策が留守宅の家族にまで拡大され、留守家族間でピア・サポート態勢が充実すれば、これらは、結果として隊員の健康向上に役立つであろう。

本学会では、これに引き続いて「外傷的出来事に職業的に関わる人々のストレスケア」という、同じく救援者を対象としたシンポジウムが行われ、大変活発な議論が行われた。今後も、救援者のMHについて更なる討議の場を期待したい。

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