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【被害者支援】6:被害者支援の裾野の広がりと法制度の役割

我が国における犯罪被害者支援が本格的に始まり、かれこれ20年以上が経過する。警察における被害者支援体制の整備とともに、全国すべての都道府県には民間の犯罪被害者支援センターが設置され、医療機関、弁護士会、臨床心理士会・スクールカウンセラー等とのネットワークも発展してきた。大分県別府市で開催された第17回大会のシンポジウムにおいては、大分県における犯罪被害者支援の実際とその発展が、支援センター、臨床心理士、精神科医、弁護士の各シンポジストから語られ、大分県においては、公的な対人サービスの中の一つとして定着していることが窺われた。

一方、今後の課題としては、従来は都道府県単位で積み重ねられてきた犯罪被害者支援の実践が、市町村単位にまで裾野を広げていくことが課題であることが指摘された。未だ、十分に被害者支援にアクセスできていない被害者の存在も少なくなく、また、支援の中でも日常生活に即した支援の提供主体が市町村行政であることから、市町村が犯罪被害者支援の主体となるような位置付けが求められる。その法的根拠となるのが、全国的に取り組まれつつある、都道府県単位の犯罪被害者支援条例であり、市町村単位の犯罪被害者支援条例である。

2005年施行の犯罪被害者等基本法に基づく県レベルの条例制定については、被害者支援に特化した条例は、全国の約3割の14道県にまで広がってきた。その中でも大分県においては、「二次的被害」に係る定義付けを行うともに二次的被害の防止について明文化しているところが特徴的である。さらに、大分県の条例においては、市町村が地域の状況に応じた施策を策定・実施する市町村に対し、必要な情報の提供及び助言その他の協力を行う旨を規定している。また、市町村が支給する犯罪被害者等への見舞金制度に、本年度より大分県は半額を助成する方針を打ち出した。こういった大分県の動きを受けて、大分県内すべての市町の犯罪被害者支援条例制定の動きが広がっている。

時を同じくして、虐待被害を受けた子どもも含まれる要保護児童や要支援児童に対しても、2016年改正児童福祉法において、支援の主体が市区町村であることが明記され、市区町村子ども家庭総合支援拠点の設置が努力義務とされた。このように、犯罪被害者支援条例が都道府県から市町村へと広がっていく動きと、要保護児童や要支援児童の支援主体を市町村とする法改正の趣旨は、全く別個の動きであるものの、従来、都道府県が中心となって進めてきた、犯罪被害者支援や虐待被害者支援などの対人サービスの支援の主体が、市町村にシフトしていくものとして、位置付けることが可能である。もちろん、市町村が犯罪被害者支援条例を制定することが目標ではなく、これらの条例を活用した市町村との連携や協働が、犯罪被害者支援の実務者や関係者には求められる。

 

JSTSS被害者支援委員会
福岡市こども総合相談センター

藤林 武史