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【被害者支援】7:学校でしばしば見られるトラウマ~その被害と対応~

第17回本学会シンポジウム・レポート報告

このシンポジウムでは、学校でしばしば見られるトラウマに対して、どのように対応しているか、またどのようなことに気を付けたらいいのかを発表して頂いた。

1人目の中村氏は、子供たちのトラウマについて理解してもらえるように教員研修を提案した。教育領域におけるトラウマインフォ―ムドケア(TIC)は本邦ではほとんど行われていないが、北米では広く普及し始めている。またTICを実装する上では、職員がトラウマの知識や対応技術を理解・習得する研修は欠かせないが、その内容は明確になっていない。そこで職員研修の内容を具体化するために、北米の教育におけるTICの取り組みを参照にし、TICの普及要因やTICの構成要素から検討を行った。その結果、背景要因としてACE研究、ゼロトレランス政策の問題点、トラウマが及ぼす学習面の悪影響が、また、構成要素としてTICの中心的価値や多層支援などが挙げられ、職員研修でこのことを伝えていくことを提案した。

また、併せて演者らがTICの観点から実施している中学校の職員研修での取り組みを紹介し、最後に今後の課題・展望として事例などのグループワークでトラウマレンズを深めていくこと、コアメンバーから職員全体への研修といったTICの実装の段階が検討された。

次に松浦氏は、学校における様々な相談の中で、トラウマのアセスメントが十分にされていないことが多く、ある問題となる行動がトラウマ関連行動である場合も少なくないことを述べた。また、本人自身「個」に行うケアだけでなく、その周囲で関わっている教員や保護者などの環境が本人にとって安心しておれるような「場」のケアという話をした。すなわちカウンセラーが教員や保護者に対してトラウマについて理解を促し(心理教育)、本人に起こっている症状や対処について理解することで、本人が安心できる環境を提供することができる。「場」のケアは子どもの症状を緩和していく大切なものであることを述べた。

3人目の卜部氏は、子供たちが様々なトラウマアを抱えていることから、SCだけでなく教員や保護者など様々な人たちの関わり合いに注目することが重要であることを述べた。

すなわち、わが国においても自然災害以外に、子どもの頃にトラウマティックイベントを体験する人は少なくないことが疫学的調査の結果でわかっており、ケアに対する潜在的ニーズは大きいが、学校におけるこころのケアが充実するためには、学校関係者がそれぞれの立場でできること、すべきことを考える必要がある。

SC(スクールカウンセラー)等の支援者に期待される役割は大きいが、トラウマからの回復は、様々な人とのかかわりの中で進むものであり、保護者や友人をはじめ、当該の子どもやその保護者のまわりにいる人たちは、ケアを進める上で貴重なリソースといえる。子どもたちの日常の一部である学校という場においてケアを考えるときに、そのことは重要である。本発表では、エピソードを紹介しながら、SCの立場から、学校という日常の中で進めるケアについて考察を行った。

最後に窪田氏が、学校におけるトラウマ被害について大学生調査の結果から考察を行った。

窪田らは、災害,事件・事故に遭遇した児童生徒の体験と支援ニーズを明らかにするために大学生対象のアンケート調査を行った(窪田ら,2018;樋渡ら、2018)。回答者516名のうち,小学校・中学校・高等学校時代に何らかの学校危機を経験した者220名(42.6%)を対象に,学校による種々の対応の実施度と必要性の認知,危機時に頼りになった人などについて回答を求めた。その結果,ニーズは高い順に学校からの説明,質問の機会,教師の見守り,声かけとなっており,SC(専門家)の直接的関与は実施もニーズも低かった。また危機時に頼りになるのは,友人,家族,担任の順で身近な人が挙げられていた。これらの結果から,危機時に身近な人々が適切な支援を提供できるための専門家による後方支援及び日頃からSCに相談することへの敷居を下げる工夫の必要性が示唆された。

4人の発表内容で共通するところは、学校でのトラウマケアは、SCだけでなく教員や保護者などがいかに子供たちの状況を理解して対応してくれるかが大きなカギとなることであった。災害時だけでなく日頃からのトラウマに対する心理教育が大きいと考えられた。

フロアからもいくつかの質問があり、充実したシンポジウムであった。

 

大阪教育大学学校危機メンタルサポートセンター准教授
岩切昌宏