JSTSS設立について

災害や事件・事故あるいは家庭内での暴力などによってもたらされるトラウマティック・ストレスとその心身への影響は、近年、日本においても大きな社会的関心が寄せられています。そしてこのような関心の広がりは、この領域を専門として知識や経験の交流と普及を目的とする学術団体の必要性を高めています。

われわれは現在、2002年3月に新しく誕生しました日本トラウマティック・ストレス学会(略称JSTSS:Japanese Society for Traumatic Stress Studies)へのご参画を呼びかけます。 

JSTSSは、米国に本部を置くISTSS (International Society for Traumatic Stress Studies)の連携組織です。ISTSSは1985年3月、自身がベトナム戦争体験を持つ心理学者Charles Figleyらによる草の根運動の中から誕生しました。そして、現在ではトラウマティック・ストレスを専門とする最大の国際学会に発展し、年次集会では各国から実に多数の報告が行われています。連携組織には、ESTSS (European Society for Traumatic Stress Studies) やASTSS (Australian Society for Traumatic Stress Studies)などがあります。JSTSSは、このような海外組織と積極的に連携しながら、会員相互の研究上の知見や実践から得られた経験と知恵の交流と普及を目指します。

トラウマティック・ストレスへの感作や適応過程は、脳と心を舞台として、神経生物学と心理学との双方向的理解が必要です。一方、社会的かつ文化的存在である人間に生じる現象を神経生物学ないし心理学的問題としてのみに還元することはできません。また、回復には医学的ないし心理学的介入にとどまらず、家庭環境や社会環境の調整も必要となります。したがって、トラウマティック・ストレスの問題は必然的に多領域にまたがります。

この学会にご参画いただきたいのは、医師、心理、看護、カウンセラー、ソーシャルワーカー、研究者、保健関係者、教育関係者など、トラウマティック・ストレスに関する研究や治療・援助あるいは社会政策などにかかわりと関心をもつ方々です。ご参画される一人一人のお力を得て、新しく誕生するJSTSSが、さまざまな領域で活動されている方々の共通のホームグラウンドとなることを希望しています。

初代会長 飛鳥井望

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