公開日 2002年03月02日
PTSDシンポジウム2002 (兼 日本トラウマティック・ストレス学会設立総会)
近年、各種の災害・事故・犯罪等に関連して、PTSD(外傷後ストレス障害)をはじめとする、いわゆる心のケアの重要性がますます指摘されるようになりました。それに伴いまして、各現場からの臨床経験の報告、研究成果も次第に蓄積されつつあります。しかしながら、PTSDなどのトラウマ(心的外傷)による心理的反応や障害についての理解はまだ十分ではなく、また、臨床や研究の成果を発表し、討論する場所も不足しております。
国際的には、米国に本拠を持つThe International Society for Traumatic Stress Studies(ISTSS)がすでに17年の歴史を持ち、学術のみならず、教育、実践、出版など多彩な活動を繰り広げております。一方、日本では、平成9年の東京都精神医学研究所の主催による国際シンポジウムを嚆矢とし、平成10年度からは厚生省精神・神経センターの研究班も発足するなど、次第にPTSD関連障害の臨床研究の素地が固まって参りました。さらに、今年に入って生じた、いくつかの事件・事故に関する援助活動をきっかけとして、より幅広いな情報交換と議論の場を求める機運が高まっております。
こうした背景から私どもは、トラウマに関連する広汎な臨床経験と知見を総合し、あるべきケアの方向を考えていくために、このたびシンポジウムを開催することと致しました。なおこの会は、日本トラウマティック・ストレス学会の設立総会を兼ねております。
このシンポジウムを契機として、日本におけるこの分野での支援活動と研究が、多方面との連携の上によりいっそうの発展を遂げ、当事者により適切なケアがもたらされることを期待しております。 皆様の暖かいご支援と、ご参加をお願い申し上げる次第です。
日時
2002年3月2日(金)
プログラム
3Fコスモスホール2
■開場 9:00~9:45
■開会式 10:00~10:30
■基調講演 10:30~12:00
司会: 金 吉晴(国立精神・神経センター)
『PTSDの現況と課題―近年の取組みをふり返って―』 小西聖子(武蔵野女子大学教授 人間関係学部教授)
■招待講演1 13:00~14:30
司会:飛鳥井望(東京都精神医学総合研究所)
『Terrorism as an Opportunity for Education about the Health Effects of Trauma(テロを契機に広がるトラウマの健康上の影響に関する啓発活動)』 Bonnie L. Green(ジョージタウン大学 精神科教授)
■招待講演2 15:00~16:30
司会:金 吉晴(国立精神・神経センター)
『Effective Treatment of PTSD (PTSDの有効な治療法)』 Jonathan R.T. Davidson(デューク大学 精神・行動科学教授)
■パネルディスカッション 16:45~17:30
『PTSDの臨床と研究はどう出会えるか』
座長:金 吉晴(国立精神・神経センター)
B.L. Green, J.R.T. Davidson, 小西聖子、飛鳥井望
※ 招待参加:Dr. Joseph Chen(台湾国立草屯療養院副院長)
■懇談会 18:00~(3Fコスモスホール1)
日時
2002年3月3日(日)
プログラム
A会場:3Fコスモスホール2
シンポジウム A-1 9:00~10:30
「地域保健はPTSDのファーストエイドとなりうるか:最近の災害、事故での取り組み」
座 長
金 吉晴(国立精神・神経センター)
A-1-1
「小規模地域災害と地域保健福祉」 山本耕平(和歌山市保健所保健対策室)
A-1-2
「死傷者の出ない災害の経験から-北海道有珠山噴火災害」 阿部幸広(北海道立精神保健福祉センター)
A-1-3
「東海村臨界事故の心理的影響」 井口藤子(武蔵野女子大学心理臨床センター)他
指定発言
藤田昌子(兵庫県立精神保健福祉センター)
シンポジウム A-2 10:40~12:10
「子ども達のトラウマと教育現場での介入」
座 長
田中 究(神戸大学医学部)
奥山真紀子(埼玉県立小児医療センター)
A-2-1
「大阪教育大学メンタルサポートチームの授業再開までの活動について」 元村直靖(大阪教育大学健康科学講座)
A-2-2
「大阪教育大学メンタルサポートチームの授業再開後の活動について」 岩切昌宏(大阪教育大学発達人間学講座)
A-2-3
「桑名空中衝突事故へのトラウマ支援」 鈴木 誠(くわな心理相談室)
A-2-4
「学校管理職の危機管理意識とコラボーレションのあり方」 藤森和美(聖マリアンナ医学研究所)
シンポジウム A-3 13:30~15:00
「女性達のトラウマからの回復:性暴力とDV被害者への援助の実際」
座 長
小西聖子(武蔵野女子大学)
A-3-1
「性被害者に対するサバイバル・トレーニングとしてのトラウマワーク-怒りのワークとイメージ誘導を用いての短期療法から」 堀之内高久(横浜国立大学保健管理センター)
A-3-2
「DV被害女性の心理とケア」 加茂登志子(東京女子医科大学付属病院)他
A-3-3
「被害者支援都民センターにおける性暴力被害相談の実態と早期介入についての検討」 中島聡美(常磐大学コミュニティ振興学部)他
★B会場:5Fオリオン
シンポジウム B-1 9:00~10:30
「日常臨床の中でのPTSD」
座 長
飛鳥井望(東京都精神医学総合研究所)
冨永良喜(兵庫教育大)
B-1-1
「解離性同一性障害の臨床像とその病理について」 本田教一(松村総合病院コンサルテーションリエゾン科)
B-1-2
「精神病院を受診した児童虐待歴のある患者について」 後藤晶子(国立肥前療養所)
B-1-3
「総合病院一般病棟で心的外傷関連疾患を診る」 白川美也子(国立療養所天竜病院小児神経科・精神科)他
B-1-4
「性的虐待を受けたケースへの援助」 三輪健一(湖南病院)
シンポジウム B-2 10:45~12:10
「人為災害とトラウマ」
座 長
広常秀人(大阪市立総合医療センター)
B-2-1
「えひめ丸沈没事故生還生徒に関するメンタルヘルスケア」 前田正治(久留米大学医学部精神神経科)他
B-2-2
「交通事故の精神的後遺症」 藤田悟郎(警察庁科学警察研究所)ほか
B-2-3
「多数の犯罪被害者に対する精神保健サービスの提供方法について」 藤林武史(佐賀県精神保健福祉センター)
B-2-4
「ギリシャ・バスジャック事件における危機介入」 神山昭男(在フランス日本国大使館)
指定発言
川名典子(聖路加国際病院)
シンポジウム B-3 13:30~15:00
「業務に関連したトラウマティックストレスとその対応」
座 長
岩井圭司(兵庫教育大学)
B-3-1
「救援者としての派遣任務に従事する自衛隊員の精神的ストレスに関する実態調査―海外派遣におけるストレス調査」 沢村岳人(防衛医科大学校 研究センター)
B-3-2
「災害救援者の被る長期的影響-阪神・淡路大震災で活動した消防隊員の調査から」 加藤寛(兵庫県ヒューマンケア研究機構こころのケア研究所)
B-3-3
「米国同時多発テロ事件によるエアライン客室乗務員の外傷性ストレス症状とその経過」 飛鳥井 望(東京都精神医学総合研究所)
■日本トラウマティック・ストレス学会発足報告会および閉会式(3Fコスモスホール2) 15:30~16:30