公開日 2016年06月29日
このたびの15回大会では、最優秀演題賞1件、優秀演題賞2件の受賞がありました。
受賞された先生に、研究紹介も含めたコメントをいただいております。
最優秀演題賞
福井貴子先生(兵庫県ここころのケアセンター)
演題:DPATに必要なコンピテンシーとは何か
−災害精神保健分野の専門家を対象としたDelphi調査の結果-
最優秀演題賞をいただき、大変驚いています。今回の研究は、調査にご協力いただいた全国各地の専門家の先生方、力強くサポートいただいた兵庫県こころのケアセンター長加藤寛先生をはじめとした職場の皆さま、多くの方々に支えられ成り立ったものです。大変感謝しています。受賞を機に、ますます研究に励みたいと考えています。
内容にご興味を持たれた方は、兵庫県こころのケアセンターHPに研究報告書をあげていますのでご覧いただければ幸いです。
研究紹介 :
H25年に厚生労働省が「災害派遣精神医療チーム(DPAT)活動要領」を定め、各都道府県等にDPATの体制整備や研修を行うよう求めているが、DPATについての認識や研修についての方向性は一致しておらず、各地の取り組みは手探り状態にある。そこで本研究では全国の精神保健福祉センター長をはじめ、専門家を対象にDPATのコンピテンシーに関するDelphi調査を実施した。これにより、DPATのコンピテンシーとして合意を得られた項目と得られなかった項目が抽出され、各地で組織するDPATについての専門家の合意が示された。検討が不足していると考えられる項目もあり、具体的で効率的なDPAT活動を実施するためには今後多くの話し合いを重ねていく必要があると考えられた。
優秀演題賞
谷知正章先生(防衛医科大学校)
演題:自衛隊ゴラン高原PKOの派遣男性隊員とその妻のメンタルヘルスにおける双方向的影響
この度は光栄にも優秀演題賞をいただき、誠にありがとうございます。
大変恐縮ではありますが、引き続き身を引き締めて努力したいと強く決意しております。
今回発表させていただいた内容は、自衛隊のゴラン高原PKOに派遣された隊員とその妻の、メンタルヘルスの相互作用に関するものです。妻は隊員より明らかに心理的負担が大きく、また、派遣前から帰国直後まで一度でもメンタルヘルス不調に陥った人を「メンタルヘルス不調者」とした場合、隊員のメンタルヘルス不調と妻のメンタルヘルス不調はお互いに有意に悪影響を及ぼしていました。海外派遣に際して現状でも防衛省は様々な家族支援を実施しており、少なからず妻のメンタルヘルス支援はしているところですが、もう少し直接的な「メンタルサポート」も検討する必要があるかもしれない、という内容でした。
これからもこのような自衛隊メンタルヘルス研究で得られた知見を、国民の皆様に還元すべく研究を続けたいと存じます。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
優秀演題賞
淺野敬子先生(武蔵野大学心理臨床センター、医療法人向日葵会まつしま病院、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)
演題:性暴力被害者のためのワンストップ支援センターから精神科へ紹介された被害者の実情と治療の課題
このたびは優秀演題賞という栄誉ある賞を賜り、大変光栄に思います。この研究は、2012年6月に「性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」(以下、支援センター)が東京に開設されたことに合わせて、支援センターの協力病院内に新設された精神科において行われました。支援センターを利用した性暴力被害者の精神科受診に関する報告は、国内ではほとんど見られなかったことから、私たちは、日本における性暴力被害者の実情を踏まえた早期介入方法について検討することを目的に、支援センターの紹介により精神科を受診した被害者についてカルテ調査を行いました。今回の発表では、研究期間の3年半に収集した分析対象者30名について、対象者の属性、主診断、警察への相談状況、治療転帰等の研究結果を報告しました。
本研究を遂行するにあたり、多くの方からお力添えをいただきました。特に、院生の頃よりご指導いただいている中島聡美先生に感謝申し上げます。また、何よりも研究協力いただいた対象者の皆様に心より御礼申し上げます。今回の受賞を励みに、支援員の方々と協力して、仲間とともに今後も臨床と研究に一層研鑽を重ねていく所存です。これからも変わらぬご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
以上、3件です。
受賞された先生方、おめでとうございます。