【被害者支援】2:国による犯罪被害者支援―犯罪被害者等基本法および基本計画

公開日 2017年03月21日

日本における犯罪被害者支援の推進には、犯罪被害者等基本法(2004年公布)が制定されたことが大きい。犯罪被害者等基本法は、基本理念として以下の3つをあげている:
①犯罪被害者等は個人の尊厳が尊重され、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する、
②被害の状況及び原因、犯罪被害者等が置かれている状況等の事情に応じた適切な施策を講ずる、
③再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間、途切れることなく支援を行う。

また、基本法の第14条では、特に犯罪被害者等が心理的外傷その他犯罪等により心身に受けた影響から回復できるようにするための保健医療・福祉サービスに関する施策を推進することを定めている。この基本法に基づく施策を定めるものが、犯罪被害者等基本計画である。基本計画は2005年に施行後、5年ごとに見直しが行われ平成28年度からは第3次基本計画が施行されている。
基本計画では、被害者および当事者団体、支援団体等の意見・要望に基づいて、基本理念を反映した4つの基本方針(基本理念に「国民の総意を形成しながら展開されること」が加えられている)を柱に、5つの重点課題(①損害回復・経済的支援等、②精神的・身体的被害の回復・防止、③刑事手続きへの関与拡充、④支援等のための体制整備への取り組み、⑤国民の理解の増進と配慮・協力の確保)の施策が策定されている。
これらの施策によって、被害者参加制度や損害賠償命令制度など司法手続きや地方公共団体での被害者支援窓口の設置、犯罪被害者給付制度の充実、性暴力被害者のためのワンストップセンターの設置の促進などが現在まで進められてきた。

精神的回復については、PTSD治療や犯罪被害者の精神健康に関する研究、PTSD等重度ストレス障害の治療を行える専門家の養成、犯罪被害者等に関わる司法関連の医学知識や技術に精通した専門家の育成、CAPSやIES-R等PTSDの診断に関わる医療保険適応の拡大などの施策が実施されている。

犯罪被害者等基本法、基本計画、施策等についての情報
警察庁犯罪被害者等施策HP http://www.npa.go.jp/hanzaihigai/

JSTSS被害者支援委員会
福島県立医科大学
中島聡美

参考文献:
1) 中島聡美,日本のメンタルヘルス領域における犯罪被害者支援の現状と課題,トラウマティック・ストレス,8,111-120,2010.
2) 中島聡美:犯罪被害者等基本計画 ―この10年の振り返りと今後の課題.論究ジュリスト20,160-166,2017.

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