【被害者支援】近年の犯罪被害者の施策動向等

公開日 2022年04月01日

 警察庁では、犯罪被害者等の支援全般に対して「第4次犯罪被害者等基本計画」を2021年4月に施行している。主なポイントとしては、①地方公共団体における犯罪被害者等支援として、条例制定等に関する情報提供の実施や、地方公共団体の総合的対応窓口に公認心理師等の専門職の活用をすることが明記された。また、②潜在化しやすい犯罪被害者等への支援として、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの充実や、児童虐待等の被害児童支援の充実が盛り込まれた。③加害者処遇における犯罪被害者等への配慮として謝罪や被害弁償等の充実等、さらには、④様々な犯罪被害者等(障がい者や男性、性的マイノリティ)に配慮した多様な支援の必要性についても明記された。

 一方、内閣府では、性犯罪・性暴力に特化した施策を積極的に推し進めている。2010年に第3次男女共同参画基本計画のなかで性犯罪性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの設置促進が明記され、2018年には各都道府県に最低1か所のセンター設置が実現した。2020年12月に第5次男女共同参画基本計画が施行され、性犯罪性暴力被害者のワンストップ支援センターは、2025年までに365日緊急対応をすべての都道府県で実施できるべく対策を講じていくことになった。令和元年度の内閣府委託事業の「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターを対象とした支援状況等調査」によると、近年のワンストップ支援センターの支援状況としては、72時間以内に面談が行われることが最も多く、緊急避妊薬の処方など、急性期における医療支援に対するニーズが高い。電話がかかってくる被害者の約1割は男性となっており、決して女性だけの問題ではないことも分かっている。当然、中長期には、精神的不調へのサポートも欠かせないため、いかに精神科医療機関・診療所との連携を進めていくかが問われている。

 最後に、犯罪被害者等全般の施策に関係してくるだろう市民の動きを補足する。近年、犯罪被害者らの地方公共団体における特化条例制定を求める運動が盛んにおこなわれてきた。その成果は素晴らしく、令和3年4月時点で、32 都道府県(68.1%)、8政令指定都市(40.0%)、384 市区町村(22.3%)に、犯罪被害者等支援を目的とした条例(特化条例)が制定されている。各地方公共団体によって活用できる制度やサービスは格差があるものの、条例で規定されることで、見舞金をはじめとして、家事支援、学習支援や精神医療等の助成を出す市区町村も出てきている。また直近で、2022年3月末に新あすの会(新全国犯罪被害者の会)が創立された。前身のあすの会は、犯罪被害者等基本法の設立などに貢献し2018年に解散していた団体である。会では被害者に代わって国が加害者に賠償請求する制度や、治療費を国が直接負担する仕組みなどの活動方針を打ち出した。犯罪被害者等基本法の施行から犯罪被害者支援は格段に拡充してきたが、今だ被害者らが望む施策、支援体制になっていないことを物語っている。更なる施策の動向に、私たちも注視していく必要がある。

 

JSTSS被害者支援委員会

武庫川女子大学

大岡由佳

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