【会長声明】ジャニーズ事務所元社長による性加害事件について

公開日 2023年09月02日


 

ジャニーズ事務所元社長による性加害事件に対する声明

一般社団法人日本トラウマティック・ストレス学会
会長  重村 淳

 

2023年8月、ジャニーズ事務所元社長による性加害事件について、再発防止特別チームが結果を公表しました。数十年にわたる膨大かつ広範な性加害の実態が明らかになり、さらに事務所に関係する諸機関の動きの不適切さが被害者続出の背景となったことが明らかになりました。このような性暴力行為は断じて容認できません。2023年3月のイギリスBBCの報道やそれ以前の告発も含めて、この実態を伝えるべく多くの被害者たちが立ち上がられました。その勇気と努力はさぞかしのものだったと推察し、最大限の敬意を表します。

性被害によるトラウマ(心的外傷)は、当事者に長年にわたって不調をもたらします。その不調は、被害そのものによる心的外傷後ストレス障害(PTSD)など、メンタルヘルスへの影響に限りません。児童思春期に受けた被害は、被害者の人生観・社会観に深刻な悪影響を与えます。また、被害そのものだけでなく、周囲からの言葉や行動によって回復が遅れたり、さらに傷ついたりすることを懸念しています。このような被害は二次被害と呼ばれていますが、匿名のインターネット・メディアでは、一方的な誹謗中傷が助長されやすいことが憂慮されます。二次被害は被害者だけでなく支援者にまで波及する場合もあります。これ以上の二次被害が起きないことを切に望んでおります。

本事件は、一個人あるいは一社の特別な事件ではありません。トラウマ対策を社会全体の課題として、組織・地域・学校・家庭など、様々な領域で取り組んでいく必要性を示唆しています。特に、被害にあっても声をあげられない被害者への介入と支援の推進、また、権威・権力の乱用による問題の潜在化には、積極的な取り組みが重要です。

被害に遭われた方々におきましては、実態が明らかになり、ご回復が進むことを心よりお祈り申し上げます。心のケアをはじめとした様々な専門家が相談・ケアに関われますので、決して一人で悩まずに、ご相談なさってください。
トラウマのケアを担っている学会員の皆様は、本件の相談者が長年体験してきた個人的・社会的状況をふまえ、丁寧なご対応をお願い申し上げます。
一般の皆様、とりわけメディアの皆様におかれましては、被害に遭われた方々の人権・尊厳の擁護に最大限ご留意いただき、さらなる二次被害を防ぐご対応を、何卒よろしくお願い申し上げます。

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