【被害者支援】犯罪被害者と「刑の執行段階における被害者等の心情等の聴取・伝達制度」(令和5年12月施行)

公開日 2024年03月26日

 改正更生保護法の施行によって、被害者等の思いに応えようとする更生保護の実現が目指されてきた。平成19年から更生保護における犯罪被害者等施策においては、被害者担当者および被害者担当保護司を全国の保護観察所に配置し、被害者のための、意見等聴取、心情等伝達、被害者等通知、相談・支援を進めてきた。

 今回の令和5年12月に施行された「刑の執行段階における被害者等の心情等の聴取・伝達制度」においては、矯正施設(刑務所・少年院)にいるときから、被害者の思いを伝えようとする取り組みの強化となる。被害に関する心情や置かれた状況、受刑・在院中の加害者の生活や行動に関する意見を聴取し、希望に応じてこれを受刑生活中・在院生活中の加害者に伝えることになる。加害者には、被害者の実情等を直視させ、反省や会議の悔悟の情を深めるよう指導を行うことになっている。

 これらは全国の矯正管区・矯正施設への申出に基づき実施することになっており、申出があると、矯正施設職員が被害者に心情等のお伺いし、加害者にその心情等の伝達を行うことになる。加害者は被害者の心情等を踏まえた指導・教育等を受けることになるが、その様子など、伝達結果の通知を被害者に行うという制度である。保護観察所でも、それに追随し、被害者等の思いに応える更生保護の実現をめざし、贖罪指導プログラムの充実等を行いつつある。

 現時点では件数はそれほど多くはないようだが、今後、被害者の権利として加害者に思いを伝えていきたいときに使える制度の一つになっていくだろう。実際、犯罪被害者への加害者からの誠意ある謝罪や被害弁償については、ほとんど加害側からなされてこなかった。加害者が十分な説明責任を果たすための教育や支援等がなされていないという問題もあるだろう。加害者の無責任な態度や社会制度の不備等によって、被害者はいまだに苦しめられているのが実情である。被害者にとっては、直接的被害だけでなく、精神的な課題、生活上の問題、捜査・裁判への対応で被害を大変な状況に置かれる。知人や職場からの無理解による配慮不足も多く、被害賠償などを求めると金目当てと揶揄される等といった二次被害に晒されることもある。そもそも犯罪に巻き込まれたくてその状況に置かれた被害者はいない。

被害者の心的外傷からの回復には、被害者の経済的回復を含め、権利回復の視点が欠かせない。私たちは、もっと被害者の声に耳を傾ける必要があるだろう。

JSTSS被害者支援委員会

武庫川女子大学

大岡 由佳

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