第23回大会奨励賞(2024年8月)

公開日 2024年09月04日

このたびの第23回大会では、2件の受賞がありました。

受賞された先生に、研究紹介を含めたコメントをいただいております。

受賞された先生方、誠におめでとうございます。

最優秀賞

浅野 孝太朗先生(防衛医科大学校 精神科学講座)

演題:陸上自衛官における精神疾患に対するスティグマと援助希求態度

 

この度は最優秀演題賞を賜り、大変光栄に存じます。

 本発表では、陸上自衛官が精神疾患に対して抱くスティグマ(偏見)の関連因子を同定することを目的とし、4754名の陸上自衛官を対象に匿名のアンケート調査を行いました。

 一般的に、軍隊にみられる文化的背景として、強さやタフネスを強調する文化(マッチョ文化)は精神疾患に対するスティグマを強め、しばしば治療を受けること(援助希求態度)を阻害するとされています。
 本研究では、種々の要因が関連因子として同定され、リーダーシップや団結力がスティグマと有意に相関していることが示されました。リーダーシップや団結力を高めるような組織的介入により、陸上自衛官の精神疾患に対するスティグマや援助希求態度を改善できる可能性を示唆する結果であり、今後、本研究が陸上自衛官の援助希求態度に微力ながら貢献できれば幸いです。
 なお、会場では、リーダーシップや団結力の内容を多くいただきました。リーダーシップとは、上司が部下に対して十分な評価や待遇を与えている、仕事の指示が明確である、コミュニケーションやサポートを行っている、共感的に接すること等を指標としております。また、団結力は、職場での友情や親密さ、相談のしやすさ等を指標としております。

 本発表にあたり、長峯正典先生(防衛医学研究センター 行動科学研究部門)、山崎真之先生(陸上自衛隊第6師団 司令部医務官)をはじめ、多くの方にご指導をいただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。今後とも、ご指導・ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

 

優秀賞

金森 由晃(東京大学医学系研究科健康科学・看護学専攻 精神看護学分野)

演題:子ども期逆境体験と意図しない妊娠との関連の検討:横断研究

 

この度は身に余る賞を授かり、大変光栄に存じます。

本発表では、子ども期逆境体験(ACEs)が成人以後にも対人関係の問題に影響を及ぼすことを念頭に、全国の妊産婦5,409名を対象として、ACEsと意図しない妊娠の関連を検討しました。ACEsの累積は一貫して意図しない妊娠と関連する結果となり、その他の要因として、成人期の家族機能や、困ったときに相談できる人がいることも、意図しない妊娠の関連要因であることが明らかになりました。

妊娠意図によってその後の母親や子どもの健康アウトカムにも影響があることとも併せて考えると、ACEsと意図しない妊娠が関連するという本研究の結果は、周産期におけるトラウマインフォームドケアの重要性を示唆するものと考えております。

ポスターセッション中にも臨床での実感と絡めた様々なご質問やご感想をいただけたこと、大変ありがたく存じます。講評でご指摘いただいたように、臨床実践において支援者が感じることのあるクリニカルクエスチョンを量的エビデンスという形で示すことができ、微力ながら本分野に貢献できていれば幸いでございます。

本発表にあたり、西大輔先生はじめ東京大学大学院医学系研究科の共同演者の先生方、JACSIS研究代表者の田淵貴大先生には丁寧なご指導を賜りました。研究参加者、学会の皆さま、ご講評をいただいた方々に、この場をお借りして御礼申し上げます。今後も周産期におけるトラウマティックストレスの研究を通じて社会への貢献に励む所存でございます。変わらぬご指導・ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

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