公開日 2025年09月22日
2025年8月に開催された第24回日本トラウマティック・ストレス学会において、被害者支援委員会では「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターにおける支援及び運営の現状と今後の展望」と題してシンポジウムを企画・実施した。
性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターは、第4次犯罪被害者等基本法及び第5次男女共同参画基本計画を設置根拠とし、被害直後からの総合的な支援を可能な限り1か所で提供し、被害者の心身の負担を軽減し健康の回復を図ること、警察への届け出の促進と被害の潜在化防止を目的として、全ての都道府県に設置されている。各センターにおいて、産婦人科医療等の支援・法的支援・心理的精神的支援が実施されているが、相談の受理については数としても件数は増加を続けており、質に関しても心理・福祉・看護の専門知識を有する専門家が支援にあたり、また関係機関との連携も含めて必要な資源の提供が行われているものの、それらを維持する経済的基盤の確保などの課題も存在する。
本シンポジウムは、本事業を所管する内閣府及び実際に支援を行う専門家・研究者に支援及び運営の現状と今後の展望についての発表とディスカッションを通して、望まれる支援の安定した提供への一助とすることを目的に実施した。
まず、内閣府の担当官から本事業の必要性と概要・運用の状況、医療機関関係者に向けた連携の案内をお話しいただき、その後、東京、神奈川、埼玉のワンストップセンターの支援にあたる心理職から、各センターの概要、支援の内容や連携の状況などについてお話しいただいた。発表の内容から、各センターにおける共通点として、都や県などの自治体や、民間の犯罪被害者等早期援助団体と定期的に支援検討のための会議を持ち、必要に応じてケースごとにも緊密な連携が図られていることや、婦人科・精神科・小児科等との医療との連携も有機的に行われていることが浮かび上がった。心理職が行う支援の内容に関しても、いずれの機関においても個々の被害者の状況や心理的反応に合わせた心理教育やそれを踏まえた生活場面での対応についての相談など、トラウマインフォームドケアやトラウマレスポンシブケアが共通して提供されていた。ディスカッションでは、ワンストップ支援センターという比較的急性期の支援が想定される機関の中で、トラウマスペシフィックケアを提供するかどうか、また、中長期の支援はどれぐらいの期間・内容で実施するかに関しては今後も検討が重ねられることが述べられた。ワンストップ支援センターでは支援者の全国的なつながりはあるものの、心理職がそれらの中に入ることが少なく、今後都道府県を越えた心理を担当する支援者のつながりを作りたいという展望も述べられた。
本シンポジウムは、9月30日までオンデマンドで配信されているため、視聴いただけると幸甚である。