公開日 2026年09月24日
このたびの第25回大会では、3件の受賞がありました。
受賞された先生に、研究紹介を含めたコメントをいただいております。
受賞された先生方、誠におめでとうございます。
最優秀演題賞
浅岡 紘季先生(東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野)
演題:COVID-19 パンデミック後の医療従事者における心的外傷後成長とprofessional fulfilmentの関連
この度は、最優秀演題賞という栄誉ある賞をいただき、大変光栄に存じます。
本研究は、COVID-19パンデミック後の日本の医療従事者を対象に、横断・縦断の解析において心的外傷後成長(PTG)がProfessional fulfilment(仕事上の充実感)と一貫して正の関連を示すことを初めて明らかにしました。本研究の知見は、新興感染症パンデミック等の大規模な公衆衛生上の危機後においてPTGがProfessional fulfilmentのfulfilmentの先行要因となる可能性を示唆し、大規模な公衆衛生上の危機後において医療従事者のprofessional fulfillmentを高めるためにも、PTGを経験できうる環境と支援体制の構築が求められることを示唆しました。
本発表にあたり、東京大学大学院医学系研究科の西大輔先生をはじめ、共同演者の先生方には大変ご丁寧なご指導を賜り、感謝申し上げます。また、研究にご参加くださった皆さま、本学会の開催にご尽力くださいました皆さま、ご講評を賜りました先生方に、心より御礼申し上げます。
今回の受賞を励みに、トラウマティックストレスに関する研究を通じ、社会に貢献できますよう一層精進してまいります。
今後ともご指導のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
優秀演題賞
押切 謙一先生(北海道大学病院 精神科神経科)
演題:学校への所属感と自殺念慮の関連:逆境的小児期体験の多少に関わらない保護的役割
この度は、優秀演題賞という栄誉ある賞を賜り、大変光栄に存じます。
本研究では、日本の一般住民を対象に、逆境的小児期体験(ACEs)の多少に応じて肯定的な小児期体験(Positive Childhood Experiences:PCEs)と自殺念慮との関連を検討しました。その結果、PCEsの総得点は用量反応的に自殺念慮との負の関連を示し、中でも「学校での居場所」は、ACEsの多少にかかわらず一貫して自殺念慮との負の関連を示しました。幼少期の逆境体験に注目した研究は数多くありますが、本研究は、学校という日常的な環境における「居場所」の重要性を示した点で、自殺予防やトラウマインフォームドな支援に新たな示唆を与えるものと考えております。
発表後には、多くの方から「居場所」の概念や援助希求との関連、今後の介入への応用可能性について貴重なご意見をいただき、大変有意義な議論となりました。本研究は横断研究であり因果関係を明らかにするものではありませんが、今後は学校での居場所がどのような心理社会的過程を通じて長期的なメンタルヘルスに寄与するのかについて、量的研究と質的研究の双方から検討を深めていきたいと考えております。
本研究の遂行にあたり、ご指導を賜りました先生方、共同研究者の皆様、そして研究にご協力いただいた参加者の皆様に心より感謝申し上げます。また、学会関係者の皆様、ご講評・ご質問をいただいた先生方にも厚く御礼申し上げます。
今回の受賞を励みに、逆境を経験した人々が安心して「居場所」を持ち、必要な支援へつながる社会の実現に貢献できるよう、今後もトラウマ研究と臨床実践の双方に真摯に取り組んでまいります。今後ともご指導、ご鞭撻のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
優秀演題賞
千葉 柊作先生(岩手医科大学付属病院 児童精神科)
演題:大規模災害時の妊娠時期と子どもの行動上の問題及び保護者のメンタルヘルスの中長期的な関連についての検討
このたびは身に余る賞を賜り、大変光栄に存じます。 本発表では、東日本大震災後1年以内に出生した子どもを持つ家庭を対象として、2016年から7年間の縦断データを用いて、母親の震災時の妊娠の有無と家庭での震災被害の程度が子どもの状態や保護者の精神健康に長期的な関連があるかどうか、探索的に検討を行いました。その結果、発災時点では妊娠前、かつ震災被害の程度が比較的低い場合、経年を通じて保護者の評価する子どもの注意の問題が高くなり、加えて保護者の抑うつの得点がコロナ流行期後に高くなっていたことがわかりました。一方で、教員の評価する子どもの状態については、同様の群について、注意の問題は最初は高いものの経年で低くなっていき、不安や抑うつなどの内向的な問題が経年に関わらず高くなっていました。 これらの結果から、長期的に見た場合、被災の程度より発災時期の妊娠有無が子どもの状態像に影響を与えることが考えられました。また、家庭と学校場面とで子どもの状態像に違いが見られたことから、複数の視点での評価の必要性が示唆される結果にもなったと考えております。 他方で、今回得られた結果は従来の想定とは逆向きのものであり、当時の支援のあり方に差が生じたためなど、様々な可能性が考えられますが、これは今後の検討課題と感じております。この点に関しては発表当日に当時現地でスクールカウンセラーであった先生方など、臨床や研究両面で貴重なご示唆やご意見をいただきました。様々なご意見も踏まえながら、さらなる解析を行っていく所存です。 この場を借りて、研究に協力していただいた全てのお子様、保護者様、教員の皆様に感謝申し上げます。また、本研究代表者の八木淳子先生を初めとした分担研究者の皆様や、各県でデータ収集に関わった皆様にも厚く御礼申し上げます。 今後もこの栄誉におごることなく、謙虚に大災害後の支援に資する研究に励んで参りたいと存じます。 今後ともご指導ご鞭撻を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。 なお、本研究は基盤研究(B)「東日本大震災後に誕生した子どもとその家庭への縦断的支援研究」の一環として行われました。
