会長挨拶
日本トラウマティック・ストレス学会のホームページにお越しいただき、ありがとうございます。
当学会は2002年3月に設立されました。当時は阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件、大阪教育大学附属池田小学校事件、アメリカ同時多発テロなど、社会を揺るがす大規模災害や事件が相次いでいました。これら出来事で支援活動を行ってきた先達たちによって、当学会が発足しました。
2011年の東日本大震災・福島第一原子力発電所事故、2020年からのCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)パンデミックという国難を経て、当学会は設立から20年以上が経ちました。
学会設立当時と比べると、トラウマ(心的外傷)の概念は医療・保健・福祉・教育の場面だけでなく、社会全体で幅広く認知されるようになりました。しかしながら、トラウマの概念が認知されたことで、専門家への期待もますます高まり、本学会が扱う領域も広まるばかりです。その領域は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の病態解明や治療の向上にとどまりません。虐待・性暴力・配偶者間暴力(DV)・犯罪・紛争のサバイバー、ご遺族、災害の被災者、職域でのトラウマ(惨事ストレス)にさらされる労働者らへの支援・ケア・治療など、その領域は多岐にわたります。このような課題に関する学術的エビデンスの集約はもちろんのこと、専門家そして社会への正確・迅速な情報発信が求められています。
このたびの会長就任にあたり、このような当学会の責務を果たすべく学会運営を進めていく所存です。トラウマに関連する課題の解決、そして本学会の更なる発展には、多様な年代・職種・役割・価値観に基づく知見が必要です。とりわけ、学生~キャリア初期に「この道は重要だ」「この道で働きたい」と思う同士を増やすことが重要だと考えています。皆様には引き続きのご高配を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
2023年8月
第11代会長 重村 淳